Autumn Aqua -6ページ目

嫌だと言えない… 1

暗い部屋にたった一人で
うずくまっている清水 憂は
泣いていた…
どうして泣いているのか
自分ではわからず
ただただ涙がでている
この涙は止まることがない
憂がこの暗い部屋にいるよいになってから
出てくるようになって
最初の頃は自分の意志で
泣いたり
涙を止めることができたが
しだいに止まらなくなってしまい
今ではずっと涙を流している
まるで憂の曇った心と
共鳴しているかのように…

貸し借り


護と歩は
ほぼ同じ時期に
コンビニでアルバイトを始めた
二人はどちらも今までアルバイトをやった経験はなく
このコンビニのバイトが初めてだった
二人がなぜここを選んだかというと
護は家から近いし
大学の先輩から紹介してもらったから
一方の歩は
ただ簡単そうだから
というのが理由だった
ほぼ同じ時期に始めたのにもかかわらず
歩は飲み込みが早く
すぐに一人で仕事ができるようになった
護はというと
何をするにも失敗ばかり
それに当時の護は週に一回しかバイトをしていなかったため
なかなか一人立ちできないでいた
自分でも
このままではマズイと思っていたので
歩の暇な時に教えてもらう約束をしていた
この教える事が一回ならば
そんなに問題にはならないのだが
3、4回と同じ事を教えていくうちに
護のできなささに腹が立ってきて
教える数が5回から一つづつ貸しを作る事にしようと
護に提案してみたところ
あさっりとこの提案に賛成した
この時
まさか五回以上教えてもらうことはない
と護は鷹を括っていた
しかし6回も歩に頼んでしまい
借り1になってしまった
この借りをどう返すかずっと考えていた
この大きな借りは
何をやっても納得のいく返し方がなくて返せないでいたが
やっと中華まんを教えるということで返せたのだ

おでん&中華まん5

さきほどのお客様がピザまんを頼んだ時から
中華まんを頼む人が連続して
レジに並ぶ人が増えてきたので
歩にヘルプをお願いしようと思い
手を挙げたのだが
歩は考え事をしている様子で
ヘルプには気付かないので
護はイラッときたが
お客様の前では怒れないので
笑顔はたやさなかった
歩のヘルプがなくても
今回の波は乗り切ることができた
中華まんを頼む人が連続したこともあって
蒸し器に中華まんがなくなっていたので
奥の冷蔵庫からない物を持ってくることにした
行く途中で歩にあったので
護は歩をけってから奥に入った
歩は
なぜ護にけられたのか
理解できずに
「ってーな!
何するんだよ!」
もうその場にいなくなった護に怒ったが
すぐにその怒りは収まった
2、3分後
護が多量の中華まんを持って
売場に戻ってきた
多量の中華まんを置くやいなや
「おい
何でさっきけったんだよ!」
さきほど収まったはずの怒りが
護の顔を見たらまたイラだってきた
護は中華まんを蒸し器に入れながら
『お前
さっき俺がヘルプだしてたのに
気付かなかったから
それにイラッときてけったんだよ』
たんたんと言っていく護に対して
歩は喋りながらでも上手に中華まんを
入れたり整理したりできる護に嫉妬や尊敬を感じていたので
全く護の話を聞いていなかった
『って
お前人の話聞いてる?』
「え?
あ…ごめん聞いていなかった」
『ったく
勘弁してくれよ
お前が聞いてきたから答えてやったのに』
「ごめんって言ってるだろ
そんなに怒るなよ」
『まぁ
いっか! 困るのは歩だけだしな!
それよりお前も中華まんやるか?』
さっきまで機嫌が悪かったのに
コロッと変えて歩に聞いてみた
歩は護の最後の言葉を聞こえなかったふりをして
その場から逃げようとした
「…俺…ちょっと品だししてくる」
『??
それはいいけど
中華まんはどうするんだ?』
護は歩の態度に疑問を持ち
もう一度はっきりと言ってみたのに
またもや歩は聞こえないふりをした
護にとっておでんが嫌いなように
歩にとっても中華まんが嫌いだということを
歩の行動から感じ取れたので
護は少し歩に対しての見方が変わった
『歩にも苦手なものってあったんだな』
「まぁな
俺は機械じゃないし人間だもん
それに完璧な人間なんてこの世にいねぇよ」
『そらそうだな』
「苦手っつても
中華まんだけだし
護ほど致命的じゃねぇもん」
『…一言多いぞ
で…
歩は俺にどうして欲しいわけ?』
「考えてみたらさ
中華まんはおでんより売れて
このままじゃ
俺…皆の足手まといになる可能性があるんだ
そ…それでだな…
その…」
『なんだよハッキリ言えよ』
「その……」
痺れをきらした護が歩の答えを待てずに
『俺に教えて欲しいんだろ?』
歩に確認の意味で聞いてみたところ
黙って頷いたあと互いに目が合い笑いあった
護は
これであの時の〈借り〉は返したからな
心の中で思った
歩もまた
これで〈貸し〉はなくなったな
と思っていた