企業結合において取得企業が取得した被取得企業の純資産の額と、取得するために支払った対価の額の差額として算出・計上されるのれんですが、日本会計基準(JGAAP)と国際会計基準(IFRS)では会計処理が異なります。
会計処理の違いの概要を説明します。
JGAAPの会計処理
JGAAPの場合、取得したのれんは価値が逓減していくとの考えのもと、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法その他の合理的な方法により規則的に償却することになっています。
のれんは被取得企業の決算書に現れていない将来の超過収益力として捉えられていますので、この超過収益力が企業結合後に生み出している収益と、のれんの償却費を同時に計上することで費用と収益を会計期間内で対応させているという見方もできます。
しかし、目に見えないのれんを「価値が逓減している」と仮定して機械的に償却する方法は実態を本当に反映しているとは言えないのではないか、そもそも耐用年数を見積もることも困難ではないかという批判があるようです。
IFRSの会計処理
IFRSの場合はJGAAPのように償却は行わず、減損損失の計上要否を毎期判断します。
まず経済環境の変化や業績の著しい悪化など「減損の兆候」があるか判断し、ある場合には
"Qualitative assessment"という定性評価、"Quantitative test"という減損テストを行います。
1. Qualitative assessment
のれんを含む報告単位の公正価値が簿価を下回る可能性が50%以上か判断。
50%以上であればQuantitative testに進む。
2. Quantitative test
公正価値が簿価を下回っているか判断し、下回っていればのれんの簿価を超えない範囲で公正価値と簿価との差額を減損損失に計上。
なお減損の兆候がない、公正価値が簿価を下回る可能性が50%以上ではない、公正価値が簿価を下回っていない場合は減損損失の計上は行いません。
このようにのれんの価値の毀損をしっかりと判断するのがIFRSですが、減損の兆候に該当するようなイベントがない場合やQualitative assessmentで公正価値が簿価を下回る可能性が50%以上と判断されない場合は、実際に価値が下がっているにも関わらず実態を反映できない場合もあるという欠点もあります。
所感
上記の通り、JGAAP、IFRSどちらの会計処理も一長一短であり、議論もある論点で一概にどちらが良いかは言えないところです。
昨今JGAAPがIFRSへコンバージョンし、会計基準の改正という形でJGAAPにIFRSの考え方が取り込まれていますので、将来的にはJGAAPがIFRSの会計処理に近づいていくのではないかとも思うのですが、のれんの償却に関してはJGAAPがなかなか譲らない部分でもありますので、もうしばらく現在の会計処理が続くのかもしれません。
以上