ピカソは本当に偉いのか?
西岡文彦 著
新潮社
2012年10月


どの絵がすばらしくて、どの絵がすばらしくないかというのは、
小さい頃からの疑問でした。

絵を描くのが好きだったので、ピカソをはじめとした「有名な」
絵にも興味をもち、図書館で借りた画集を眺めたり、たまに
美術館に連れて行ってもらったりもしました。

しかし、いわゆる「すばらしい絵」を見ても思ったほどの感動はなく、
苦悩の日々が続きます。
いいところを見つけるまでじっと眺める、画集の解説を読む、
他の画家を探す、といったことをしましたが、やはり、「絵のよさ」
について、納得のいく判断基準や感性を得ることはできないままです。


本書は、この間図書館で見つけて借りてきたものですが、
この手の問題に対して一つの答えを提供しています。

答えそのものは、うすうすみんな思っていたことかもしれませんが、
一冊の本をかけて丁寧に説明されることで、頭の中で確固としたものに
なっていくので、この本を読む価値はありました。


「絵画の価値」が本題ですが、ピカソの私生活や創作活動についても、
時代背景の説明を補足しながら、いろいろ書かれていて勉強になりました。
ピカソは小さい頃に興味を持ったっきりだったので、知らないことが
たくさんありました。


中学校の美術の教科書に、いろいろな画家の自画像ばかり集めた
ページがありました。その中で、ピカソの自画像だけ幼稚園児の描いた
絵みたいで、浮いていました。
当時の筆者は、喉になんかつまったような顔だと思って見ていたのですが、
著者の西岡さんに言わせると、この絵には、絶望が現れているそうです。

ピカソは珍しく、生前に大金持ちになった画家ですが、お金の代わりに
失ったものもあったのではないかという言うのです。

中学の美術の時間に、ピカソの自画像を見て絶望を感じる生徒はいるの
でしょうか?
筆者にはそんなふうには見えませんでしたが、感性のすばらしい人には、
ピカソの生涯を知らなくても、そう見える人がいるかもしれません。
前回最後にちらっと言った「剰余の定理の一般化フグ」ではないですが、

   フグ
   剰余の定理は、一次式で割った時の余りに関する定理。
   これを二次以上の整式で割った場合に拡張できたらいいね、とかいうことを
   前回述べた。

問題集に載っている剰余の定理の応用問題の一つを、
もとの形より少しだけ一般化してみました。



まず、もともと問題集に載っていた問題(ただし数値は変えてあります)は、

【もとの問題】
整式P(x)をx^2+x+1で割ると2x+2余り、x-1で割ると7余る。
P(x)を(x-1)(x^2+x+1)で割ったときの余りを求めよ。

です。(この問題の解答は省略します。)
これを一般化します。


【一般化された問題】
P(x)は整式で以下の条件を満たすとする。

 [条件]
 P(x)をm次式f(x)で割った余りは、整式s(x)であり、
 P(x)をn次式g(x)で割った余りは、整式t(x)である。

このとき、P(x)をf(x)g(x)で割った余りを求めよ。



もとの問題のx-1がf(x)、x^2+x+1がg(x)になって、
一般化されています。
(逆に、x-1がg(x)、x^2+x+1がf(x)でも構いません。)


一般化するため、全部の整式を文字で表しましたが、そうすると、
困ったことに、問題文で具体的に与えられている整式(x^2+x+1とか)なのか、
未知の整式(P(x)とか)なのかが分かりにくくなってしまいます。
そこで、少しでもわかりやすくするために、
未知の整式は大文字で、具体的に分かっている整式は小文字で表すことしました。


さて、この【一般化された問題】を解いていきたいのですが、


実は、この条件だけでは解けるとは限らず
(少なくとも、筆者の方法では解けるとは限らず)、
もうひとつ条件を追加する必要があります。
これを加味して、問題文を修正します。


【一般化された問題(修正版)】
P(x)は整式で以下の条件を満たすとする。

 [条件]
 P(x)をm次式f(x)で割った余りは、整式s(x)であり、
 P(x)をn次式g(x)で割った余りは、整式t(x)である。

さらに、方程式g(x)=0の解はすべて相異なるとする。

このとき、P(x)をf(x)g(x)で割った余りを求めよ。




g(x)に上のような条件があれば解くことが出来ます。
g(x)は重解をもたないということですね。
【もとの問題】のx-1とx^2+x+1はともにこの条件を満たします。


では、解いていきましょう。


[一般化された問題(修正版)の解答]
P(x)をf(x)g(x)で割った商をQ_1(x)、
余りをとすると、

 P(x)=f(x)g(x)Q_1(x)+R(x)

と書ける。さらに、f(x)の[条件]より、

 P(x)=f(x)g(x)Q_1(x)+f(x)Q_2(x)+s(x)
 
と書き直せる。ここで、R(x)をf(x)で割った商をQ_2(x)とした。
R(x)はm+n-1次以下なので、Q_2(x)はn-1次以下である。

方程式g(x)=0の異なる解をx_1,x_2,・・・,x_nとすると、
連立方程式

が得られる。ここで、f(x_k),s(x_k),t(x_k)はすべて定数だから、
未知数は、Q_2(x)の係数(n個)だけである。
この連立方程式はn元一次であるから解ける。
よって、Q_2(x)が具体的にわかり、
R(x)=f(x)Q_2(x)+s(x)が求められた。//



以上により、
重解がない場合は、
「二段階割り算」と「連立方程式」で解けることが分かりました。
【もとの問題】ではn=1なので、「連立方程式」の部分は
(連立でない)単なる方程式になり、剰余の定理を使うことなります。




この一般化により、たとえば次のような問題は解ける、といえます。


【問題の例】
整式P(x)を(x+1)^4で割るとx^3+2x^2-x+1余り、
(x+1)(x^2+x+1)で割るとx^2+3x-1余るとする。
P(x)を(x+1)^5(x^2+x+1)で割ったときの余りを求めよ。


数値は適当なので、答えはきれいな数字にならないかもしれませんが、
上と同じ解法を使って解けるはずです。



---英語版



エディタの機能上、日本語では、数式と文章を混ぜて書けない。
今のところ、問題文をきれいに書くためには英語で書かないといけない。
数Ⅱで、「剰余の定理」と「因数定理」というのを習う。

筆者は、これらの定理について、
わかったようでいまいちよくわからないと
ずっと思っていた。

証明と主張がごっちゃになったり、
仮定と結論の関係が混乱したりして、
頭の中で正確に把握されていなかった。


今回、この定理たちを復習する機会があり、
理解を新たにしたので、ここにまとめておきたい。



【剰余の定理】
整式P(x)を一次式x-αで割った余りは、P(α)である。




剰余の定理というのは、

 一次式で割った時の余り

に関する定理だ。
したがって、剰余の定理自体は、
二次以上の整式で割った余りについては何も言っていない。



[剰余の定理の証明]
整式P(x)をx-αで割った商をQ(x)とする。
余りは0次以下の整式すなわち定数だからRとすると

 P(x)=(x-α)Q(x)+R

と書ける。(整式の割り算の筆算をすればよい)
ここでx=αとすると、

 P(α)=R

したがって、整式P(x)をx-αで割った余りはP(α)である。□





さて、剰余の定理からすぐわかる命題として因数定理がある。
(どういうふうに“すぐわかる”のかは後述の因数定理の証明を見て下さい。)



【因数定理】
整式P(x)について、次の(1)は(2)となるための必要十分条件であるである。

(1)P(x)は一次式x-αで割り切れる
(2)P(α)=0




[因数定理の証明]
まず、「(1)ならば(2)」を示す。
(これはほとんど当たり前である。したがって、剰余の定理は使わない。)
(1)が成り立つとすると、P(x)をx-αで割った商をQ(x)として、

 P(x)=(x-α)Q(x)

と書ける。x=αとすると、

 P(α)=0

となり(2)が成り立つ。

次に、「(2)ならば(1)」を示す。(ここで剰余の定理を使う。)
(2)が成り立つとする。
剰余の定理より、P(x)をx-αで割った余りはP(α)
(2)より、P(α)=0である。
よって、P(x)をx-αで割った余りは0である。
したがって(1)が成り立つ。□





剰余の定理は、「余りがこんなのになりますよ」と教えてくれる定理だったが、
因数定理は、「割り切れるための必要十分条件」を与える定理である。

因数定理も一次式で割ったときの話なので、
二次以上の整式で割りきれるための条件についてはなにも言っていない。




高校数学の問題集や参考書には、
二次以上の整式で割った余りを求める問題もあるが、
これは、「剰余の定理の応用」であって剰余の定理から直接わかる
というわけではない。剰余の定理だけでなく、

 P(x)=(x-α)(x-β)Q(x)+ax+b

と書くなど、さらに一工夫して解いているわけである。



問題でやっていることを、一般化してまとめれば、
二次以上の整式で割る場合の“剰余の定理”となるだろう。

きれいな形に一般化できるかどうかは知らない。
できたら挑戦してみたいが。