「その2はどうした」と言われるかもしれないが,
その2は書いている途中で仕上げるのが結構大変だと
わかったので,放棄した.

その2では,α>0⇒αβ>0となるためには
虚数αが正であるということをどう定義すればよいかを
議論している.

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さて,この記事「その3」では

その1で予告したように「複素平面を使って図形的に」
考えてみよう.


虚数に大小があったとして試行実験してみる.
たとえば4つの複素数

の間に大小関係があるから
大小を矢印で表して



といった大小関係が考えられる.
ほかにも矢印の入れ方はあり得るかもしれないが,
ループしてはダメである.
大小関係だからジャンケンみたいに循環するのはおかしい.
上の2つの例はループしていないから,
とりあえずこの2つを題材に議論していこう.



以外の複素数に大小関係を拡張する.

は,
「実部を見て大小があればその大小を複素数の大小とする.
 実部が同じなら,虚部の大小を複素数の大小とする.」
というやり方で大小関係を定めたものと考えられる.
この大小関係ならば,どの複素数たちを結んでもループはしない.宇宙人

  宇宙人
  気になる方のために証明を書いておこう.
  ループするとは,
  「α<βかつβ<γ」であるにもかかわらずα≧γとなる
  α,β,γが存在する、ということである.
  どんなα,β,γに対してもそんなことは起きないことを示せばよい.
  
  とすると,α<β,β<γより
  
  だから
  よって,
  (1)の場合:α<γ
  (2)の場合:だから
  α<β,β<γより
  
  となりα<γ
  以上より,どんなα,β,γでもα<γとなる(証明おわり)


一方,

は,逆に
「虚部を見て大小があればその大小を複素数の大小とする.
 虚部が同じなら,実部の大小を複素数の大小とする.」
というやり方で大小関係を定めたものと考えられる.
これも同様に考えてループしないことがわかる.

よって,
複素数に大小関係を導入できることがわかった.
ただし,上で見たように導入できる大小関係は一つではないから,
もし複素数の大小関係を使う場合は,
どの大小関係で考えているかは断っておく必要がある.


ここからは,最初の方
「実部を見て大小があればその大小を複素数の大小とする.
 実部が同じなら,虚部の大小を複素数の大小とする.」
によって決まる大小関係について考える.

まず虚数の正負について見ておこう.

「虚数αが正であるとは,αが0より大きいことである」
であるから,α=a+biとすると
・a>0ならばα>0
・a=0ならば,b>0ならα>0
・a=0かつb<0ならば,α<0
・a<0ならばα<0
であることがわかる.

複素平面で,正の複素数を図示すると(横軸を実軸,縦軸を虚軸として)

の斜線部分および境界「x=0,y>0」が正の複素数である.
また,原点では(当たり前だが)0であり,
その他の部分は負の複素数ということになる.


不等式について考える.
α>β
とは
α-β>0
が成り立つことである,としよう.ペンギン

  ペンギン
  実は,さっき「ループしないことの証明」で
  α>βは登場してしまっていた.定義があとになりすみません.

α>βのとき,任意の複素数γで
α+γ>β+γ
が成り立つ.

しかし
αγ>βγ
は必ずしも成り立たない.

これは
(α-β)γ>0
のことであるが,
たとえばα-β=cos30°+isin30°,γ=iとすると,
γを掛けることは90°回転に相当するから

となり正の領域からはみ出してしまう.

したがって
正の複素数を掛けたからといって必ずしも正になるとは限らない.
もちろん必ず負になるとも限らない.

この回転という観点から実数の不等式を見直すと,
「掛ける数γも実数だったので
0°回転または180°回転にしか起こらず,
符号は,変化しないか丁度反転するかだった」
と解釈できる.

γが虚数だと何°の回転でも出来るから
「正だったら不等号の向きが変わらず,負だったら変わる」
というような単純なことにはならない.


もし,こうしたシンプルさを求めるならば,
複素数の正負を普通の領域で分けていたのでは無理で,
たとえば,

偏角が有理数のとき正,
偏角が無理数のとき負

のような変わった分け方をしなければならない.(と思う)

この場合,

正×正=正
正×負=負
負×正=負
負×負=いろいろ

となる.この分け方でも,負×負は満足いく結果を得られない.
というか,今度は足し算がうまくいかないと思う.


以上まとめると,

複素数に大小関係(順序関係)を導入することはできる.
しかし,
この記事で考えたような大小関係では
不等式の計算,変形がうまくいかない.

不等式がうまくいかないことが
複素数で大小関係を考えない理由なのかもしれない.
この記事では,
複素数に(導入するに値する)大小関係を入れることはできなかった.
大小関係を入れられないということも示せなかった.

今後に期待する.(おわり)
虚数に正負はないらしい.
なぜそう言いきれるのか?


そもそも正負とは何なのか.
正負の定義は,

数aが正であるとは,aが0より大きいことである.
数aが負であるとは,aが0より小さいことである.

だと思う.


正である虚数αが存在したとする.
α>0
が成り立つ.
このままでは進展がないから実部と虚部にわけて
α=a+bi
と書くと
a+bi>0
両辺に-aを加えても不等号の向きは変わらないから
bi>-a

ちょっと待った!

本当に不等号の向きは変わらないのか?

今まで学校では,実数だけの不等式を考えてきた.
しかしここでは虚数入りの不等式を考えている.

昔,正の数だけ扱っていたときは
何も考えずに,両辺に掛けたりしていたが,
負の数が入ってから足し算,引き算はいいけど
掛け算は不等号の向きが変わるという現象に遭遇した.
もしかすると,虚数では足し算や引き算でも
不等号の向きが変わるかもしれない!


そもそも
正の数や負の数のときに
足し算,引き算では不等号の向きが変わらないというのは
どうやって証明されたのか?


①いくつか具体例を計算して納得したのか?

もしそうなら,虚数の場合には使えない.
具体例といても,虚数が正とか負とかいうことが
何を意味するのか我々はまだ知らない.


②図形的に考えたのでは?

数直線を使って考えたのかもしれない.
虚数も仲間に入れてやるとしたら,
数直線から複素平面に拡張しないといけない.
数直線上にある数は全部実数だから.

しかし,直線のときは大小が見れたが,
平面となると難しい.
(↑これについては次回詳しく書く.)

(一旦おわり)

二次方程式

の判別式とは

のことであった.

これはDと書かれることが多い.つまり

と書かれる.

普通,判別式が使われるとき
二次方程式の係数は実数だが,
もし係数が虚数だったら,判別式は使えるだろうか?

判別式の起源に遡ってみよう.

判別式は,解の公式

から生まれた.もしa,bが実数なら

が実数か虚数かは√Dの部分で決まる.
もっといえばDの正負で決まる.

これが判別式の背景である.

そうすると,
a,bが虚数のときは√Dのところだけ見ても
解が実数か虚数かはわからない.たとえば

はD=2>0であるにもかかわらず虚数である.

よって,
少なくともa,bが実数でないと判別式は使えないことがわかる.

では,cは実数でなくてもよいのだろうか?

は一見したところcが出て来ないから,cはなんでもいいような気がするが,
cはDの中に隠れている.もしa,bが実数で,cが虚数であったとすると,

は虚数となり正も負もない.

よって,Dが正とか負とか言っている以上,
実質的にはcも実数でないといけない.

まとめると,
a,b,cが実数のときしか判別式は使えない.(おわり)