前回、
成分が行列であるようなベクトルを考えて,
内積を使って,なす角を調べよう!という所で
終わりました。

その後、
続きを計算しようとしたのですが、
二つの問題に突き当たりました。

一つ目は、
数値がとんでもないこと。
二重根号くらいなら、まだ書く気もしますが、
逆行列を求めるためにデターミナントを
計算して見ると、

となります。
逆行列を求めるためには、この逆数をとって云々しなければなりません。
さすがに、もう少しましな手はないかと立ち止りました。

それに、これを計算したとしても、その値から何か有用なものを
読み取れそうな気配がありません。(少なくとも筆者はそう思います。)

二つ目は、
ベクトルでいう

を、前回、行列で

と書いたわけですが、
よく考えると、行列はかける順番によって値が違うかもしれないので、

などほかの順番の積も考えないといけません。
どれを採用すべきかということです。


そういうわけで、
内積から角度を求めるというのは、
なかなか荷が重いことが分かったので、
もう少し簡単なところから少しずつ攻めて行きたいと思います。



そもそも、
「なす角を求める」とか言ってますが、
求められるのはcosθです。
値が行列であるようなコサインから角を求めるとは
どういうことでしょうか?
とりあえず、行列の三角関数がどういうものなのかを
はっきりさせておく必要があります。


さて、どうするか?

前回、導入した「可逆行列に限る」は
今後も採用します。
むしろ、もっと行列の種類を絞るべきかもしれません。

というのも、
以前記事にしたこともあるのですが、
対角行列に限れば、行列の関数は簡単です。
任意の関数fについて、

と定義すれば万事うまくいきます。
この定義を使えば、たとえば

のように加法定理が成り立ちます。
まあ、このように実数の関数の公式が行列でも成り立っていることは、
対角行列のかけ算がどういうものなのかよく観察すれば、
全く不思議なことではありません。当たり前のことです。

対角行列は非常に特殊な行列ですが、
対角行列でなくても、「対角化」カメできる行列では
同じようなことができます。

  カメ
  対角化について詳しく知りたい人は、
  線形代数の本を見れば書いてます。

対角化可能な行列は行列全体のどれくらいを占めているのでしょうか?
全体ではないことは確かです。
でも、可逆行列と比べたら・・・?

対角化なんかは、どうせ大学に行けば勉強するので、
ここでは、別の方法で行列の関数を考えたほうが面白い、とも
思いましたが、もしかするととりあえず対角化をまず押さえた上で、
対角化できないやつに移る、という計画で行くかもしれません。
そのときの決めましょう。


今回の記事は、対角行列でない行列では、
行列の関数を定義するのが難しいということを
示す例を挙げて終わります。

安易に、

とおいてみましょう。
すると以下のようにe^(A+B)=e^A e^Bが成り立ちません。




構想としては、
[1] 対角化+対角できない行列の検討
[2] 行列を一次変換と見て、一次変換と実数の対応から調べる
のいずれかを考えています。
行列は数だ!

というスローガンのもと
Accademia Nutsでは行列を研究してきました。
(といっても、全然進展がないですが。)

しかし、今日
ブレイクスルーとなりそうなアイデアを
思い着きました。

それは、
「可逆行列ののみを扱う」
というものです。

本当は、すべての行列を扱いたいのですが、
どうにも膠着しているので、
とりあえず、割り算ができて数っぽいやつだけに
しぼって考えようというわけです。


集合の記号で書くと、

ここで、Rの二重文字(っていうのかな?)は実数全体の集合です。
a,b,c,d∈とは、a,b,c,dが実数だということです。
ad-bc≠0は正則行列(可逆な行列)になるための条件でしたね。


成分が実数である2次正方行列全体をM_2()と書くことにすると、

とも書けます。
detAはad-bcのことです。デターミナント(determinant)と言います。
英語のdetermineは「決定する」という意味でしたが、
行列が割れるかどうかを“決定”しているわけです。宇宙人

  宇宙人
  determinantの語源については正確なことを知りたい人は
  行列の教科書などで確認してください。

成分が実数である可逆な2次正方行列全体を
Fと書くことにしましょう。つまり

とします。
Fが変な字になっていますが、これはカッコつけてるだけです。
地の文では、このカッコいいフォントは出ないので、単なるFで我慢します。


さて、実数の代わりにFを使って
ベクトルを考えてみましょう。

ベクトルの足し算

ベクトルの成分を行列にしてみました。
ベクトルの成分ごとに,行列の足し算をするだけです。
A_1,A_2,X_1,X_2∈Fとすれば


スカラー倍

スカラーも行列です。Fの元がスカラーです。
よって、各成分で行列の掛け算をします。
Γ∈Fとして


内積

内積の値は実数ではなく、行列になります。
成分で書くとちょっと大変ですが、

となります。

お馴染みの公式

が、もしFのベクトルでも成り立つなら、

てな感じでFのベクトルがなす角を計算できそうですが、
文字のままこれ以上やっても煩雑になるだけかもしれないので、
ここから先は具体例で見てみましょう。


なんの脈絡もないですが、
簡単そうな正則行列ということで

で計算してみましょう。
果たしてうまくいくでしょうか?

まず準備として部分ごとに計算しておきます。

そして

最後の“=”は気合いで計算すれば出ます。
実際に2乗してみれば、とりあえず正しいことはわかります。
また

です。

もう遅いので今日は一旦この辺で。
ちょうど準備が終わったところです。
次回はこれもとに計算をしてcosθを求めます!
数学の楽しみ 身のまわりの数学を見つけよう
テオニ・パパス 著
安原和見 訳
ちくま学芸文庫
2014年第7刷(2007年第1刷)


数学のネタ帳みたいな本です。
黄金比の話題、論理パズル、幾何の定理・・・が載っています。

この手の本は、買わないようにしていたのですが、
本屋のキャンペーンにつられて買ってしましました。

以前紹介したシュタインハウスの本より
ずっと一般向けです。(シュタインハウスは割りとマジでした。)
幾何の証明や数式も出て来ますが、
歴史的なことなど“お話”も多いです。

一つの話題につき1~3ページ程が当てられており
どんどん読めます。
また、この本の特徴として
どの話題にも絵か図がついています。
絵のないページはないと言ってもいいでしょう。
由緒ありそうな絵が多く、いい雰囲気を出しています。

今「まえがき」を読んでいたら、
『もっと数学の楽しみ』(邦題『数学は生きている 
身近に潜む数学の不思議』秋山仁他訳)というのもあるそうです。
こちらのほうが数学的に詳しいのでしょうか?
こっちにしとけば良かったかな?