建築美で新設された豊田市博物館 | 歴史ニュース総合案内

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 愛知県豊田市の2つの博物館が市美術館の隣に移転され、4月26日に豊田市博物館として開館した。「みんなでつくりつづける博物館」をモットーに、坂茂(ばん・しげる 女川駅など)が美術館と一体の新たな展示空間をつくりあげた。

 郷土資料館と「近代の産業とくらし発見館」を統合して、拳母城(ころも 又は七州城)の跡地に開館した。猿投窯からトヨタの工場までモノづくりの町だった市の産物を紹介する常設展示「とよたモノ語り」では、高さ8mの壁の中に市の物産を収めた。土器から剥製、昭和の民具まで様々な物産を一望できる。

 次の「とよた記憶トラベル」では市民の声から民衆の記憶に迫る。次の「たんきゅうラボ」では平地から山間まで広がる豊田市の自然を魅せ、「とよた物語」でやっと王道的な歴史紹介となり、最後に廊下を降りる「とよたパノラマスロープ」で常設展を振り返る展示構成だ。モノ語り以外でも多くの展示品を高い壁に収めており一見危ういが、これが坂茂の推す耐震設計である。谷口吉生の市美術館と一体の庭園(by ピーター・ウォーカー)と一緒に、美術館のような空間となった。新築博物館として初めて、省エネ建築の認定証「ZEB Ready」を取得した。

 

 豊田市の中心部は伝統的には拳母が藩の名前にも使われた由緒ある地名で1951年の市移行時も拳母市だったが、その8年後に豊田佐吉や豊田喜一郎(静岡県湖西市生まれ)の名を採って豊田市となった。自動織機から自動車へと進出していったトヨタ自動車関連の記憶は、長久手市のトヨタ博物館や名古屋市のトヨタ産業技術記念館に集約されている。