香住「光の事件」の真相 | 歴史ニュース総合案内

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 兵庫県香美町に伝わる「光の事件」の真相がオーロラだったことがこのほど判明した。香住の沖で大昔に100日ほど空が光った伝承だ。

 国立極地研究所の片岡龍峰准教授は但馬の町に伝わる「光の事件」はオーロラではないかとの相談を2020年に受けた。香住区にある八坂神社長福寺に伝わる「天王御影向縁起」の真相を調べて欲しいとの依頼だ。

日本に現れたオーロラの謎』(化学同人)をこの年に刊行する准教授は、国文学研究資料館山本和明教授と2022年から調査に当たり、1834年に写本された「但馬美含郡卯月嶋山長福寺縁起」に注目。そこで南北朝時代の応安3年(1370年)秋に夜空が輝いたとの記録を見つけ、「盡夜耀事アリ光只波利ノ如シ」との御影向縁起の元ネタと鑑定し、3月に研究資料館の紀要で論文化(「縁起と赤気」した。

 

 同年には香住より南の京で低緯度オーロラが目撃されたと記録されている。京のような低緯度でのオーロラ(赤気)観測記録は、藤原定家の「山月記」が名高い。つまり、件の発見はそのオーロラが北でも観測されていたという話なのだが、2人が八坂神社に長福寺縁起を寄贈してから間もない5月11~12日に太陽フレアが起き、香住で目撃できるほどの大きなオーロラが発生。時期が極めて劇的だと注目されて全国へ報じられた。