小学生の収蔵庫体験から始まるニホンオオカミ4例目の剥製 | 歴史ニュース総合案内

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 東京上野の国立科学博物館が所蔵する剥製からニホンオオカミが新たに確認され、2月22日に公表された。きっかけになったのは、当時の女子小学生が茨城県つくば市の収蔵庫特別公開イベントでやった指摘だった。

 小学4年生だった小森H(本名が載っているが、未成年なので)は、ヤマイヌの一種として保管されてきた剥製がニホンオオカミではないかと「科博オープンラボ」で2020年11月に直感した。小2の時から絶滅種のニホンオオカミに興味を持っていた小森は、小5になって自由研究で剥製がニホンオオカミだと唱えるレポート「ヤマイヌ~私が解明したい謎のニホンオオカミ~」を出して、図書館振興財団の「図書館を使った調べる学習コンクール」で文部科学大臣賞を受賞。千葉県我孫子市の山階鳥類研究所の小林さやか研究員がこれに目をつけ、学術論文にするよう説得した。

 そこから、前足が短いなど剥製にニホンオオカミの特徴を見出す水準から2年間に亘って客観調査を実施。東京科学博物館以来の標本番号に混乱があったが、上野恩賜動物園で100年以上前に飼われていたニホンオオカミの可能性が高いとする論文を科学博物館の川田伸一郎動物研究部研究主幹らとの共著で書き上げ、電子ジャーナル「国立科学博物館研究報告 A類」で論文「国立科学博物館所蔵ヤマイヌ剥製標本はニホンオオカミCanis lupus hodophilaxか?」を公開した。ニホンオオカミの剥製はこれで国内4例目(他に科学博物館のNSMT-M100、東大大学院農学生命科学研究科、和歌山大学)となる。

 

 小中学生がフィクションでなく現実界で学問的な成果を挙げるとは、このような探究活動の過程を踏むということだ。保管されていた剥製は科学博物館の特別展「大哺乳類展3――わけてつなげて大行進」(6月16日まで)で公開されている。