衣の色が変わったドラクロワの民衆女神 | 歴史ニュース総合案内

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 ルーヴル美術館がウィジェーヌ・ドラクロワ(1789~1863)の大作《民衆を導く自由の女神》を修復し、5月2日に再公開した。過去の修復で上塗りされたニスを取り除くと、マリアンヌ女神の黄色いチュニックが明るめの灰色だったことが判明した。

 フランス美術館修復研究所(C2RMF)が正式名《民衆を導く自由》(260×305cm)の修復活動を2023年9月から実施。赤外線分析の後、絵の光沢を保つために1949年から8度も塗られたニスを可能な限り除き、1831年5月に初公開された頃の姿を復元しようとした。すると、三色旗を掲げて民衆を鼓舞するフリジア帽の女神の服の色が白化した。ニスの所為で服が黄色くなったものが、広く親しまれていることになる。

 また、背景の雲と同化していたが、女神の右の少年(ガマン)など民衆の銃からは白煙が上がっていたことも判明。下側の犠牲者たちの細部が明らかにされた。栄光の3日間と呼ばれる革命の熱狂を伝えている。

 

 ロマン派のドラクロワがシャルル10世を追い払った1830年の七月革命を祝して制作した本作は、フランス国家が一度買い上げた。しかし、オルレアン公ルイ・フィリップの立憲君主体制が守旧色を強めると、革命を扇動しすぎているとしてお蔵入りとなった(ドラクロワ自体は画壇に受け入れられた)。ルーヴル美術館はナポレオン3世の体制も終わった1874年に本作を購入した。ドゥノン翼の看板展示である。