オリジナル路線の陰陽師ゼロ | 歴史ニュース総合案内

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 夢枕獏の人気シリーズ「陰陽師」の新たな映画として、「陰陽師0」が公開されている。安倍晴明と源博雅コンビの学生時代を原作者監修のオリジナル脚本で描いており、内容は少年的なものとなった。

 脚本も担当した佐藤嗣麻子監督が陰陽師ファンタジーの看板である同シリーズの前日譚を創造。陰陽道の本質はトリックと看做している安倍晴明が陰陽寮の学生(ガクショウ)となっている。なお、晴明の両親は九尾の狐伝説によらず殺されている。金の竜の謎を解いて村上天皇源博雅らに気に入られる。だが、得業生の殺人事件が起き、推理をしていた晴明は仲間に陥れられ捕えられる。そこから集合的無意識のはずの異常から急に怪異の世界へ突入していき、火竜との戦いが始まり、いつもの敵役とは異なる全ての黒幕が現れる。

 

 娯楽系の話づくりで一般的な話づくりの文法を踏まえている。だが、英語を平安時代設定で用いるなど、夢枕陰陽師の世界観は大して踏まえられてないようで、寧ろ陰陽師が登場する漫画やライトノベルに近い。そもそも怨霊の悩みを聞くのが通例で、怪異が実在する設定になっている世界で、晴明が科学的な探偵を始め、中盤からひっくり返して呪(しゅ)使いになってもそぐわない。滝田洋二郎監督が夢枕陰陽師を話題作に仕上げた2001年の映画には敵わないだろう。