ソクーロフ監督が引退 | 歴史ニュース総合案内

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 ロシアの映画監督アレクサンドル・ソクーロフ(74)が2023年12月、現役引退を表明した。ソ連期のデビュー作公開禁止に始まり、最新作「独裁者たちのとき」に対する禁圧が終わりとなった。

 イルクーツク州で生まれるも、軍人の父の転勤で各地を転校した。ゴーリキー大学からモスクワの国立映画学校で監督術を学び、「孤独な声」を卒業制作するが、発禁措置を受ける。アンドレイ・タルコフスキー監督の推薦で撮影所に就職でき、ドキュメンタリーを手掛けたが、作品は軒並み上映禁止になった。

 ペレストロイカで発禁が解かれ、ソ連が崩壊してから知名度を上げる。「ソルジェニーツィンとの対話」を撮影でき、サンクトペテルブルクでエルミタージュ美術館を90分でワンカット撮影した「エルミタージュ幻想」で世界的な監督となった。

 

日本文化にも親しんでおり、詩人の島尾ミホに密着して「ドルチェ・優しく」を撮影した。そして、敗戦前後の昭和天皇を扱った「太陽」(2005)が日本で最も著名な作品。これは絶対権力者の内面を描くシリーズの一作で、ヒトラーの「モレク神」や「牡牛座 レーニンの肖像」に続く作品だった。役者(イッセー尾杉)の演じるコミカルな昭和天皇は一部の反発を買ったが、最期の場面を描いた先行2作に比べると、穏健な描写である。ゲーテの世界の「ファウスト」でこの権力者シリーズは完結する。

 最新作ではヒトラーやスターリンら第二次大戦の指導者たちが冥界に集う内容に。権力者たちの欲望を描いたがゆえに発禁となった。