なるか古文復興 | 歴史ニュース総合案内

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発掘も歴史政治も歴史作品も

 古文の待遇が2大人気分野を扱うNHKの大河ドラマに伴って変動するかどうか注目される。平安中期の文学空間が2024年は紫式部と藤原道長の「光る君へ」で扱われ、2025年には蔦屋重三郎の「べらぼう」で江戸文学への注目が高まる。学校教育を念頭に置き、現代社会の古文像を描いてみたい。

 

 *学校教育の外側で古文に触れる機会は減る一方である。「光る君へ」に深くかかわる関連書籍では、原文を記載せずに現代語訳だけを掲載することが多い。歴史系の新書や入門書レベルでは和歌以外を現代語訳にするのが出版界の基本のようで、「光る君へ」の時代考証役である倉本一宏の新書(例えば『藤原道長の日常生活』)でもそうなっている。古文や漢文は研究書レベルで初めて遭遇する。古文の基本は中学校から教えるのだから、入門書レベルからもっと使えばよいのに、書籍づくりの現場では現代語訳だけ載せれば十分というのが標準だ。

 

 *古文や漢文の古典探究を必修科目から外そうという声もある。だが、古文の授業は歴史科目の一つであり、日本史では詳しく扱わない風俗を担当している。日本史教育の枠内だけでは、衣食住などの風俗は表面的にしか扱わない。

 

 *学校での標準的な古文教育では、文法や特殊な言葉の意味は教えるが、崩し字の読み書きや候文などの書式、漢文の書き方などは教えない。古文の授業としては中途半端なものでしかないが、学習指導要領は簡単には変わらない。興味がわかないのに必修だから学ばざるを得ないと悩む受験生は、実際の教育内容はこの程度なのだからと割り切ってほしい。

 

 *中央公論社の『マンガ 日本の古典』シリーズは読み物としては面白くとも、原典の古文がほぼ掲載されていないので、クイズ王Iの宣伝とは違って試験には役立たない。また、漫画でよく見かける古文的な喋り口は、本来の古文からかけ離れた作者の無知な作文であり、そんなものは中二病の汚名を着せられ笑われるのがオチである。しかし、真正の古文までそのように嘲笑してはならない。

 

 *世界と日本の思想史と宗教史を実際には教える倫理の科目も歴史科の一つだが、多くの高校では教えられていない(日本史や世界史教科書の記述は作者と概念と著書を表面的に列挙しているだけ)。それゆえ、これらは学校カリキュラムの外側で読むのが基本で、そうした営為が読書の楽しみである。古文もそうしてしまうのも一案だが、国語教師が全力で止めにくるだろう。