伊能図の新たな現存小図の副本 | 歴史ニュース総合案内

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 日本地図学会は5月18日、伊能忠敬(1745~1818)が19世紀に作成した日本地図の「伊能小図」の新たな副本を確認したと発表した。福岡県北九州市のゼンリンミュージアムに2020年7月、伊能地図の小図の未確認の副本が寄贈された。

 この副本は蝦夷地、東日本、西日本の3枚組で、伊能が作成した小サイズの日本地図の全点である。部分的には他の小図もあるが、3枚とも揃っているのは、東京国立博物館が2002年に確認して所蔵したものしか確認されていない。今回のものは色彩、字体、模写のための針穴がみられ、東京のものと同時期につくられたとみられる。

 伊能が1800年からつくり出し、江戸幕府の天文方が1821年に完成させた正式名・大日本沿海輿地全図は、縮尺別に大図214枚、中図8枚、小図3枚からなる。しかし、江戸幕府に機密資料として提出された全図の原本は1873年に皇居火災で失われ、控図も関東大震災で焼失してしまった。現在紹介される伊能図の大図は、焼け落ちる前に諸大名が書き写した地域の地図か維新期の模写だが、大図の全点が現存している訳ではない。よく登場する伊能図は中図である。

 

 この小図の複製が、6月5日から8月29日までゼンリンミュージアムで開かれる特別展示「伊能図――新たに存在が認められた實測輿地圖」で公開される。