徴用工判決の転換 | 歴史ニュース総合案内

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 韓国大法院が10月30日、日本の植民地統治期に新日鉄が行った強制徴用に対して、原告4人へ各1億ウォンの損害賠償を命じた。1965年の日韓請求権協定で放棄された個人補償に道を開く転換点となる。

 最高裁に相当する大法院が出した判決は、原告への賠償を命じた控訴審判決を支持するもの。植民地統治(日帝強占)や強制徴用自体が違法という観点から、被害者に徴用先の日本企業への個人請求権があると判断した。新日鉄住金は時効を主張したが、信義に悖ると押し切った。

 原告団は1997年に大阪地裁から提訴したが、2003年に最高裁で敗訴した。原告団は提訴先を韓国に移し、請求権消滅の判決を受け続けたが、大法院が2012年に原告有利の観点からソウル高裁に差し戻し。翌7月に「核心軍需業者」の新日鉄へ賠償が命じられ、新日鉄が上告していた。この間、4人の原告のうち李春植氏を除く3人が亡くなり、遺族が訴訟を継続した。

 

 この判決は、日本企業への同趣旨の訴訟へも援用できるため、想定される莫大な費用負担を嫌い、日本政府が国際司法裁判所への提訴をちらつかせる構えさえみせている。日本軍従軍慰安婦の実在を認める談話を出した河野洋平官房長官の息子である河野太郎外相は、判決を受け入れず、韓国に進出する日本企業に賠償しないよう求めた。補償金は韓国政府が出すべきと主張した。韓国政府は判決への具体的発言を避けている。

 徴用工に対しては、韓国政府が1970年代に8万4000人へ計92億ウォンの補償金を出したことがある。2007年には計6200億ウォンが追加補償された。ただし、これは韓国側が実施した処置であり、日本政府や企業とは無縁に行われた。