手塚治虫、デビュー直前の未発表作を発見 | 歴史ニュース総合案内

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 「漫画の神様」こと手塚治虫(1928~89)がデビュー直前に著した未発表の作品が11月2日までに手塚プロダクション(手塚プロ)の手で確認された。中学の頃の同級生が60年以上保管していたものを、手塚プロが4月の古本市で約300万円かけて購入した。
 この作品は19ページの無題作品。「ペテン大学」の「オーソロミオ迷世教授」が戦後の闇市に生きる子供のために大学教授たちを集めて会議を開き、恐らく変な対策を用意する筋書きだ。「ヒゲオヤジ」の原形も登場する。手塚プロの方でも存在を把握していなかったようだ。
 大阪大学医学専門部の学生だった手塚治虫は1947年、赤本の『新宝島』で実作者(当時は酒井七馬の子分扱い)としてデビューした。玩具屋が娯楽のために制作する赤本は部数だけは多くても文学的な価値はまったく認められない制作業者認定の非公式文化で、今日でいえばライトノベル的なものである。そうした赤本分野から登場した手塚が「漫画に非ず、小説にも非ず、ストーリーマンガ」という作品形式を整備し、大人にも受容可能な表現を開拓していったのである。
 同級生の証言によると、手塚は実のところ少年時代から指導力と構想力を持つ人間だったという。しかし、昆虫画などはそれなりに上手くても、正統なる大人文化内の専門家としての技術は持ち合わせていなかったので、漫画という表現形態をあえて選択し、正統文化内の映画や小説から先駆的に表現を剽窃摂取し、今日の名声を獲得したのだった。

 

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