静かな時へ
その扉を叩く凄まじい音は長く続いた。
途中で音がしなくなると 『諦めて帰ったのかな』 と
思うとまた激しく叩き始めるといった具合に何時まで
も続いたのだった。
『怖い人たちのもめごとか』
『だとすると巻き込まれたらまずいな』
『当局の手入れか』
『それなら声がするし強制的に店内に入ってくるはず』
普段ならビビりまくってどう逃げようかなどと考えてし
まうところなのだが、酔って気が大きくなっていたせいで
この日は、怖いというより何かが起こることに期待をして
いたのかも知れない。
店内は静まり返り扉を叩く音だけが響いている頃、ママと
思われる人物がまくし立てるように何処かに電話をしている。
その電話から5分もしない内にある男性が現れてからは
平静を取り戻し部屋に明かりも付いて何事もなかったように
女性たちの笑い声が聞こえはじめた。
ドアの外で何があったか計り知れないが男性は、当局の
人間では無いのでドアを激しく叩いていた男性を追い払った
所から察すると用心棒だったのだろう。
普段を取り戻した店はやがて明かりが消され話し声も聞こえ
なくなり僕もやっと深い眠りに落ちることが出来たのだった。