握りしめた手のひらに
そっと隠した物は何ですか


それは幼い頃に流した悔し涙
それは切ない初恋の胸の痛み
それは優しい友達についた嘘



握りしめた手のひらに
そっと包んだ物は何ですか


それは優しい君の微笑み
それは君の唇の柔らかさ
それは君を抱きしめた時の胸に伝わる脈拍の温かさ



握りしめた手のひらに
こぼれ落ちた物は何ですか


それは君に伝えきれなかった想い
それは君に言えなかった謝りの言葉
それは君を奪えなかった後悔



握りしめた手のひらに
残っているものは何ですか


それはセピア色の二人の写真
それは渡せなかった君への指輪

それは消える事のない君への思い…








つまり
あれはそういう事なのだ

だいたい恋などというものは
本当はどうでもいいものなんだ

それはつまり
季節の変わり目にこじらせる風邪のようなものだという事だ
体力的に弱っていたり
精神的に疲れていた時に
こじらせやすいものなのだ


あの頃
僕は確かに疲れていたんだ
精神的にも体力的にもね
そこに君が現れた
君はニッコリ微笑んで
「大丈夫なの?無理しないでね」
なんて言うから
ついつい勘違いしてしまいそうになっただけの事なんだ

渡り鳥だって 長く飛び続けていたら
たまには
枝ぶりのいい木に留まって休んだり
美味しそうな餌を見つけたら食事休憩をとりたいと思うだろう

ただ そこの居心地が良かったから
いつもより長居をしてしまっただけの事なのだ

あぁ もちろん僕だってそんなに
簡単に勘違いする程 若くはないし
距離をおいて君と接してきたつもりだった

ただ君が
いつの間にか僕のそばにいるのが当たり前のようになって
僕を見かけると
自然と微笑んでくれるようになったから
僕は少し人生ってものも案外悪くないもんだな
って思えるようになったのさ


「それで 何が言いたいの?」


いやいや
別に何か特別な事を言いたい訳じゃない
どんなに寒い冬が来ても その後には必ず春が訪れるし
桜の木が春にいつもきれいな花を咲かせるのは
自然の摂理なんだ


「何が言いたいのか分からないわ」


だからつまり
僕が朝顔だったら…

「あら?桜じゃないの?」


いや 桜と言うよりも朝顔のほうが…まぁ菊でもいいんだが…

「あら 菊よりも桜の方がきれいだわ」


分かった
じゃあ
僕は桜だ
桜は春になったから芽をふいて花を咲かせる訳じゃないんだ
冬の間に枝の中で春に咲くつぼみを育てているんだ
はたから見たらパッと花が突然咲いたように見えるけど
少しずつ花を育ててきたんだ


「それで結局 何が言いたいの?」


あぁ

つまり…

僕はその…


君に会えてうれしいよ…。






お前を里子に
もらう前に
言っておきたい
事がある
かなり厳しい言葉も言うが
オレの本音を
聞いておけ


オレより早く
エサ欲しがるな
オレの食事中
トイレを使うな
壁で爪を研ぐな
猫草たべて吐くな
できる範囲で
構わないから


忘れてくれるな
しつけもできない里親に
捨て猫など引き取れる
はずなど
ないって事を


お前の仲間と
みんな平等だ
エサも仲良く
分けっこをしろ
カーテンを登るな
食卓に上るな
コップのお茶飲むな
ちゃんと専用の水飲みあるから


たまには甘えて膝に乗って来い
寄ったら逃げるな
寂しいじゃないか
少しはなついてくれ
オレは一体お前のなんなんだ


忘れてくれるな
オレの食うカレーはタマネギ入りなんだ
舐めたらお前には毒


歳をとったら
虫など捕まえてこなくてもいい
たまには粗そうを
しても構わない
例えば一日中
陽向で寝ていても
そこにいて
くれればいい


寿命が訪れ
立てなくなったら
無理にどこかに
消えなくてもいい
最後にオレを見て
一言でいいからなけ
お前のおかげで
いい人生だったと
オレが言うから
必ず言うから


忘れてくれるな
拾いものだがお前は
大切な家族
お前は同士だって事を


忘れてくれるな
拾いものだがお前は
大切な家族
お前は同士だって事を…。