街は人で溢れかえっている


ほら
道路だっていつもと違ってたくさんの車で渋滞している

誰もがクリスマスに浮かれて
恋人の待つ場所や
家族の待つ家に
急いでいる

僕だってその一人だよ


仕事を早く切り上げて
雪の降りそうな暗い雲を見上げて
冷たい風に思わず震えて襟を立てた

車の渋滞だって鼻歌まじりだったし
ケーキを待つ行列だって気にならなかった


あぁ だけど
君の一言は僕を凍らせた

クリスマス気分も
一瞬で吹き飛んでしまった


なんで君はそんな事を言うんだい

僕が君をいつ傷つけたって言うんだい

黙り込んだ二人の目には
美味しそうなケーキだって色褪せて見えている

街を彩るイルミネーションさえも
もう白黒にしか見えない


今年のイブは
ブルークリスマス

一緒にいたい夜なのに

今は一人でいたい



浮かれた人達の笑い声も
僕の心を虚ろにさせるだけだ

空に浮かんだ半分の月だって
まるで泣いてるみたいだよ


今年のクリスマスは
ブルークリスマス

こんな日は早く終わってしまえばいいのに


あぁ
クリスマスなんてもういらないよ。














あなたに抱かれて
息苦しい時に
抱きあった姿のまま
氷になってしまえ

くちびるとくちびるを重ねたまま
指先と指先をからめたまま

永遠に私たちが離れないように
魔法をいまかけて欲しい

ふたりが氷の彫刻になれたら
私たちの愛は
不滅なの


あなたに抱かれるのが
愛のかたちだから
抱きあった姿のまま
氷になってしまえ

夢うつつ目に涙うかべたまま
くちもとに微笑みをうかべたまま

永遠に私たちが離れないよう
魔法をいまかけて欲しい

ふたりが氷の彫刻になれたら
私たち不滅なの


氷の彫刻になれたら
私たち不滅なの

氷の彫刻になれたら
私たち不滅なの


くちびるとくちびるを重ねたまま
指先と指先をからめたまま

永遠に私たちが離れないよう
魔法をいまかけて欲しい

ふたりが氷の彫刻になれたら

私たちの愛は
不滅なの


不滅なの








はじめてその少女から手紙を貰った時は
ずいぶんと面くらったものだった


「はじめまして、おじさま。私はいろんなところを旅して人生について考えるつもりです。おじさまは私のことを知らないけれど私はおじさまを知っています。私は旅の先々でおじさまに手紙を書きます。それでは行ってきます」


なんだこれは?


僕は少女に全く心あたりはなく
おそらく人間違えであろうとほかっておいた


しかしそれから時々
少女から絵はがきが届くようになった



「こんにちはおじさま。私は悲しみの海に沈んでいます。エーゲ海より」


「こんにちはおじさま、私は犬年生まれの魚座です。絵に書くと笑ってしまいます」


「こんにちはおじさま。私が死んだら、ラベルの『逝ける王女の為のパバァーロ』をかけて欲しい」


人違いだと割りきっていたのに
いつの間にか彼女の事が気になるようになっていた


しかし絵ハガキは来るものの
彼女の住所は書いてないので返事を書く事もできない


「こんにちはおじさま。おじさまの気持ちはよく分かります。お返事は気になさらないで。私の言葉だけ聞いて頂けたら私は幸せです」


う~ん
なんかお見通しみたいだなぁ



「こんにちはおじさま。マトリョーシカになってしまった夢をみました。私の中にちょっとづつ小さな私がいて、私を割ると果てしなく小さな私がいるの。やっと夢から抜け出して甘い蜂蜜をたらして熱いロシアンティーを飲んでほっとしているところです」



う~ん
女の子っておかしな事を考えるもんなんだな
あっ
夢の話か


それにしても彼女は僕にどうして欲しいのだろう


「こんにちはおじさま。おじさまはただ私のハガキを読んでくれたらいいのです。私という人間がこの世に存在していたという事を知っていてくれたらそれでいいのです」


う~ん
なんだか切ないな


なんだか本当の娘のような気持ちになってきたぞ


「こんにちはおじさま。王様とロバと私、あしたはみんな死ぬ。王様は退屈で、ロバは病気で、私は恋で」


おやおや恋をしてるんだね


「こんにちはおじさま。あいつのせいで私はすっかり死体です」


うわっ
失恋したのかなぁ
悪い男に騙されてなきゃいいけどなぁ



「こんにちはおじさま。私は豆の木をどんどん登っています。人間もお家も小さくなって、地平線が丸く見えます。もう少しで雲に届きます。とてもすがすがしい気分です」


うん失恋から立ち直ったのかな
良かった、良かった



ところが
それから少女からの手紙はパッタリと来なくなってしまった


彼女はいまどこを旅しているのだろうか


外国?

それとも
日本のどこか?


もしかすると
本当に空の上に行ってしまったのだろか?



僕は彼女の事が心配で

今日も郵便ポストを覗いているのだ。