たしかに前年度産の米を買わないというのは風評被害でしょうが、今収穫されているものが売れないのは当然だと思います。
私は福島県にいるので、地元のものも食べていますが、関東や別の地方に住んでいたら、あえて買うのは避けると思います。
国の暫定基準値に対する疑問もありますが、百歩譲ってこの基準以下のものは食べることにするとしても、実際流通しているものが基準値以下という保証はないでしょう。
その理由。ここに住んでいて感じること4点を掲げます。
1、国や県が告知する出荷制限や栽培方法の指針などが確実に農家に届いていない。
2、局地的に放射能の汚染度が全く異なるのだから、野菜の汚染度もかなりムラがある。
3、栽培方法が異なれば、同じ汚染土壌において同じ作物を栽培しても、全く違う汚染になる。
4、市場を通さない直売所やイベントなどで流通する可能性。
1、に関しては、情報通な人はいいのですが、部落の回覧や口伝が頼りの農家は情報が遅れることがあるのと、文章だけでは正しく理解していないことがあると思います。だいぶ前の話ですが、伊達市の年配の知り合いは、米の作付けが可能かどうか、結局最後まで誤認識していました。最終的には作付けOKになったのですが。
2、についても、サンプル数が少ないのが問題です。同じ作物でも汚染の低い市町村のものが出荷制限で汚染の高いところで制限されていない状況をみると、基準超えのものが出回っても不思議ではありません。
3、については、まく肥料の比率やどこの何を投入したかによって変わってくるでしょう。いろんな有機質肥料を多量に投入する有機農業はその点では注意が必要だと思います。中通りの知人でも、牛糞堆肥や鶏糞堆肥をトラックで運んできて使っている農家はよくいます。
4、については知人が出荷制限野菜を出してしまったという事例があります。川俣にいたころも地元の直売所では制限野菜も取り扱っていました。また、基準値超えの農産物や肉の流通が次から次へと明らかになる状況を踏まえれば、今でも出回っていると思うのも当然でしょう。
こんな状況の中で信頼回復するには、私は汚染していない農産物を作ることだと思います。
「多少の汚染ならがまんして復興のためにみんなで買おう」というのは、根本的な解決にならないと思います。
今の福島とくに中通り(場所にもよるが)の農産物は信頼がない+汚染されているのです。
そして、汚染土壌を耕して作付けしてしまった畑は、何年にもわたって汚染野菜を作り続けなくてはならなくなってしまいました。今年の春、原発事故後、田畑を作付けをしばらく見合わせた後、避難地域以外では作付けが認められてしまいましたが、そこで耕さずに地表を除洗できたら、今後何十年にもわたって悩み苦しむことがなかったのに。。。と思ってしまいます。もちろん広大な農地の全部を除洗するのは現実的には大変ですが。
放射能に関しては農家は被害者です。でも汚染野菜を作って買ってもらうことで復興というのはちょっと違和感を感じます。
私が田畑を手がけるのは食べ物を自給するのもそうですが、いちばんは知人や仲間に食べてもらいたい。だから気合を入れて取り組むことができてきました。しかし、このような状況で、自分の農産物で喜んで食べてもらえるのでしょうか?
信頼を回復し、安心して、しかも喜んで食べてもらうためには、汚染された田畑の耕す前に除洗するのがいちばんだと私は思います。

うちのすぐ近くで放牧されている牛