前説

 

 

私はアンプに関してそんなに経験豊富な方では無いと思います。そんな私でも、サブを除いた本線だけ数えて、両手で足りない位のアンプは通り抜けていきました。

やはり若い頃ほど情熱もあって、アンプ変遷が激しかったような気がします。

 

そんな経験のなか、確かにアンプを交換すると音質は変わるのです。ただ、それは本当に物理的にアンプの品質が変わったから変わったと感じていたのか、ちょっと疑わしい。自信がない。

 

オーディオをやっている方には、ヒト聴覚が精密無比な測定器のような表現をされる方がいらっしゃいます。本当はそうなのかもしれないがしかし、学術的な論文の中で私が読んでいる限りの聴覚はとても愚鈍で、感度が悪く、識別閾値が高く、そして再現性も悪い。確かに音質は変わるのです。それは間違いない。ただ、それはアンプやケーブルのせいではなく「自分側」の変動であることも多い。気温気圧の変動や体調変化などのアーティファクトで、聴こえは変わります。また、「変えた」という事実により実際に「聴こえ」も変わってしまいます。いわゆる先入観というやつです。測定器に例えるなら、測定器側の特性が大きく変動してしまうのです。これなら音質が違って当然です。

 

以前、知人を招いてケーブルの比較試聴をしたことがあります。ケーブル交換後に「あっ、違う。」と言っていただけました。しかし実は私、交換するフリをしていて結線を変えていなかったのです。という笑えないオチ。今思えば知人には申し訳ない事をしてしまったと思いますが、そんな体験を通じて自分自身もあまり信用しなくなりました。

 

特にアンプの比較試聴をするときなど、セッティングしなおしたり、結線をやり直したりするので時間が空いてしまいます。また、音量を揃えているつもりでも音量は変わってしまいます(これも大きな要素)。時間が空いてしまって、確かに変わった気がするのだけれど、本当にそうなのか自信は持てない。。。変えたと言う満足感だけでも聴こえは変わると思う。

なので、比較するのであれば最低限、スイッチングの時間を最短にすることと、ゲインを揃えること。このふたつを揃えてテストしようと考えたってなわけですわ。

 

 

音質差の検知

 

 

前述のように、私はもちろんアンプ交換によって音質差を感じてきました。大きなアップデートを感じたこともあるし、逆に大きなダウングレードを感じたときもあります。ただ、今ひとつ本当にアンプの違いによる差を聴き取っているのか自信はありませんでした。

 

大きく時間は空いてしまうし、なによりケーブル類など周辺もセットアップも変化することが多く、極端な事例ではスピーカーも一緒に変わりました。本当に土俵をそろえた比較になっているかは疑わしかったです。

 

今回の実験の最大の功績・成果は、

「アンプの音はやっぱり違うね」と胸を張って言えるようになったこと。

これに尽きますね。

 

これは気のせいなんかじゃない。気のせいで済ませるにはあまりにもあからさまに、如実に、決定的に音質が異なるのです。

 

でも、A/Bボタンは私が自分で押していますからね。先入観の可能性がないでもない。こういうときは、オーディオに精通しつつ耳の劣化したオヤジやジジイの言うことは信用しない。耳のよい子供に判断させるに限ります。忖度や先入観のない12歳の娘を引っ張り出して、音を聴かせてみました。耳慣れたアニソンで。

  カチッ・・・ どう?音変わった? ぜんぜん違う。 どっちが好き? 前のが良かった。

ハイ、私の評価と完全一致しました。

 

今回、アンプA/Bで音質差が大きい・・・というのもひとつポイントだったかもしれません。傾向が似ているアンプではこんな如実な違いは感じられないかもしれませんね。ラッキーでした。

 

 

 

答え合わせ

 

 

ラック背面でプルーブを当てて、答え合わせをします。

現状の配線状態は:

 

 [A] が6ch MOS-FETアンプ。 [B] がMERIDIANでした。

 

大方の予想では、[B] MERIDIANの音質が勝ちますよね。だって、どう考えたって自作のおんぼろアンプが、メーカー製のそれも一線級に高品位な造作のMERIDIANに勝てっこ無い。相手が安価なプリメインならいざしらず・・・。私もそう想像していました。

でもその予想を覆して、勝ったのは[A]の方なんです。それも大差をつけて。

 

音質の高低で語るべきではないですね。単に「好み」でいって[A]の方が好きです。点数をつけると7:3くらいの比率で自作アンプの方が好ましい。ありとあらゆる要素で、MERIDIANに勝てる隙はほぼ無いです。そんなバカな。あり得ない。何が要素でそんな事になるんだ?経年劣化か?

 

 

ここで、過去ブログから思い当たるふしを何点か引っ張りだしてみます。

「これアンプのせいなのか?」的な感想が幾つか残っているんです。

 

 

瑞々しく生気に溢れていて、色彩感があります。Upsilonを鳴らし始めた頃に同じようなことを書いた記憶があるんですが、記憶のなかのUpsilonとはかなり違う感じの音が今鳴っています。こんな音じゃなかったと思う。(けど自信なし)本当は、アンプで音なんか変わらないよと書きたくて構えていたんですが、どうにもこれはこのアンプのせいでかなり音が変わったような気がしてます。

 

Upsilonも普通に良いと思って聴いてましたが、Gammaは異次元。

超大型ヴィンテージも素晴らしいが、現代オーディオはやはり違う点ですごい、凄まじいと思う。

こんな音だったっけ?感。これ、新しいMOS-FETアンプの効果もあるのでしょうか?

そんな気もしないでもないけど、でも前回のGamma体験から間が空きすぎてしまったから、もうbefore/after全っ然わかりません。

 

子供の頃に聞けていた音は、自作のMOS-FETパワーアンプで鳴らしていたから。それが、今回また半自作のMOS-FETアンプにしたことで、蘇った?? まさかね。やはり気のせいですよね、偶然だと思います。ただ、「あの音はもうウチでは鳴らない」と思ってた音が最近かたっぱしから「鳴る」ので、狂喜乱舞です。

今ならば、確信をもって言えます。

これらの感想は、パワーアンプが変わった事によって音質に決定的な違いを感じていたから。

 

当時は間があいて自信なさげな言い方をしていますが、おそらくはアンプの本質的な違いを聴き取って喜んでいたのだと想像できます。自分では確信のもてないうちに、音質は大きなジャンプアップを果たしていた。

 

「子供のころに聴こえていたあの音」が鳴り始めたのも、このMOS-FETアンプが原因でした。間違いない。MERIDIANにすると、欲しい特定パートが鳴らなくなっちゃうことを確認しました。

 

 

 

では次回、「じゃ、具体的にどう違うのよ」感想を少しだけ書いて、

それから今度は高域のドライブで比較試聴をしてみたいと思います。