アレック・ソス 部屋についての部屋@東京都写真美術館の覚書
10月某日、アレック・ソス 部屋についての部屋@東京都写真美術館に行きました。アメリカ現代写真を牽引する写真家、アレック・ソス。訪れた土地の人々や風景を、詩的な静謐さで写し出したロード・トリップ写真で知られる写真家ですが、本展では「部屋」をテーマに選りすぐられた初期〜最新作を展示。部屋で過ごす人々、人々が暮らす部屋そのもの、写真家が部屋に招いた人々など…部屋と人の親密なつながりを静かに、けれどありありと収めています。《Sugar's Davenport, Iowa》2002〈Sleeping by the Mississippi〉より 《New Orleans, Louisiana》《Crystal, Easter, New Orleans, Louisiana》2002〈Sleeping by the Mississippi〉より ミシシッピ川流域を、8×10で撮影した初期カラー作品。手軽なスナップショットとは違い、セッティングに時間を要する大判カメラを通して、ソスは旅の道中に出会った人々と一定の時間を過ごす。綿密なコンセプトと偶然性をたずさえた、詩情豊かなドキュメンタリー。《Two Towels》2004〈Niagara〉より 古ぼけたモーテルの一室。こちらも8×10で、新婚旅行者も自殺志願者も多く訪れる観光地ナイアガラを、滝そのものの雄大さよりも、そこに集う人々の内面に目を向けて写したシリーズ。《William Egglestron, Memphis, Tennesee》2000 《Boris Mikhailov, Berlin, Germany》2004《Nan Goldin, Brooklyn》2018《Stephen Shore, New York City》2019ソスが影響を受けた写真家たちのポートレート。そういえばソスは深瀬昌久にも影響を受けたと知って、どちらも好きでニチャる私。ナン・ゴールディンのシビれるかっこよさ…とワンコ笑《Nan Goldin, Brooklyn》2018《Bil, Sandusky, Ohio》《Prom #1, Cleveland Ohil》《Home Suite Home, Kissimmee, Florida》2012《Dave and Trish, Denver, Colorado》 2013〈Song Book〉よりプロムの喧騒や親密な男女の一室、カオスな子供たちなど、日常・非日常で交流する様々な人々。全米各地の地域コミュニティに集う人々をモノクロで写したシリーズ。《2007_10zl0006》《2008_08zl0215》2007〈Broken Manual〉より現代アメリカ社会から離れて隠遁生活をする人々をとらえたシリーズ。廃墟や洞窟、人里離れた場所に確かに残る人の気配。《Untitled34》2003〈Dog Days, Bogotá〉より 養子縁組のために訪れた、南米コロンビアの首都ボゴダでのシリーズ。手続きが完了するまでの約2ヶ月間、街並みやそこで暮らす人々を撮り続けた。《Untitled 16》2003〈Dog Days, Bogotá〉より 《sari, Tokyo》《Park Hyatt Hotel, Tokyo(self-portrait)》《Bellring Shojo Heart, Tokyo》《Park Hyatt Hotel, (mirror)》2015新宿のパークハイアット滞在中、ネットで自ら見つけた被写体を自室に招いて撮影した。映画『ロスト・イン・トランスレーション』に着想を得たシリーズ。《Anna, Kentfield, California》2017《Ute's Books, Odessa》2018〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より《Cammy's View, Salt Lake City》2018《Nick, Los Angels》2017《Vince, New York City》2017〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より《Still Life》2024〈Advice for Young Adults〉より 最後は、世界初公開の最新シリーズ。アメリカの美術学校を舞台に、若いアーティストたちのポートレイトや教室にあるオブジェなどを撮影している。しんみり考えてしまう写真もままある中、このシリーズはなんだかよりポップに感じた。被写体のエネルギーかな。アーティストたちの現在過去未来が対峙する。よく見たらこんなとこにソス笑大伸ばしで見るソスの写真は、きれい過ぎてしばしば目が流れてしまい、でも通り過ぎかけてハッと気づく違和感が面白かった。…などなど。2年前、神奈川県立近代美術館での初回顧展にどうしても行けず無念だったので、今度こそと楽しみにしていた本展。かえって無念さが増すことになるとは会場そばのロビーで、出品作が収録されている写真集をまとめて見られたのもありがた嬉しかったです。めちゃかっこよかったもいもい写真はわからない 撮る・読む・伝えるーー「体験的」写真論 (光文社新書) [ 小林紀晴 ]アレック・ソス 部屋についての部屋会期:2024.10.10.木〜2025.1.19.日会場:東京都写真美術館料金:一般800円WEBアレック・ソス(1969-、アメリカ・ミネソタ州生まれ)は、国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした、写真で物語を紡ぎだすような作品で、世界的に高い評価を受けてきました。本展「部屋についての部屋(A Room of Rooms)」には、初めて出版されたシリーズであり、初期を代表する〈Sleeping by the Mississippi〉から、今秋刊行の最新作〈Advice for Young Artists〉まで出品されます。30年に及ぶソスの歩みを単に振り返るのではなく、選ばれた出品作品のほぼすべてが屋内で撮影されているように、「部屋」をテーマにこれまでのソスの作品を編み直す、当館独自の試みとなります。出品作品のひとつに〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉というシリーズがあります。アメリカの詩人、ウォレス・スティーヴンズ(1879-1955)の詩「灰色の部屋(Gray Room)」の一節からタイトルがとられた本作は、2019年に同名の写真集としてまとめられ、ソスのキャリアにおいてひとつの転換点となっています。初期からソスはアメリカ国内を車で旅し、風景や出会った人々を大判カメラで撮影してきましたが、本作ではそうしたロードトリップのスタイルではなく、舞踏家・振付家のアンナ・ハルプリン(1920-2021)や、小説家のハニヤ・ヤナギハラ(1974-)など世界各地にさまざまな人々を訪ね、その人が日々を過ごす部屋の中で、ポートレイトや個人的な持ち物を撮影しています。すなわち、部屋とそこに暮らす人をテーマとするこのシリーズが、本展を生み出すきっかけとなりました。〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉では、静謐な空間で被写体から醸し出される親密さが大きな魅力となっています。「どれだけ激しくあなたの心臓が鼓動しているのか知っている」というタイトルは、その瞬間を写し留めたソスの胸中だけではなく、展示室というひとつの部屋の中で、作品と対峙するわたしたちの心の内までをも言い表しているかのようです。 「ポートレイトや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」と作家は述べています。ソスの作品に登場するさまざまな部屋や、その空間にたたずむ人々に意識を向けることで、果たして何が見えてくるのか。展覧会と写真集共に多くの支持を得る作家の表現の魅力を探ります。