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内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙@国立西洋美術館の続きです。

 

挿絵写本の面白い絵が好きなので、各章ごとに気に入ったおもしろ装飾をまとめます。

今回は聖書詩篇集聖務日課賛歌集に見るおもしろさんたちです。

 

▼前回

 

 

 

聖書

中世ヨーロッパで最も需要なテキストで、多数の写本が制作された聖書。

内藤コレクションの中心も、13世紀イングランドおよびフランス聖書写本零葉からなる。零葉とは、本からバラした1枚もの(リーフ)、一部のもの。

 

 

指差し<赤字のところを指差して、ここポイント!って感じで可愛い。

《聖書零葉》 フランス, アヴィニョン 1320-30s半ば

 

紙の流通が無かった時代、写本には羊皮紙などの獣皮紙を使用。

また、混色技術が無かったので、寒色と暖色を交互に塗って鮮やかに描いた。

 

 

イングランドで制作された小型聖書から、創世記の一部を記した零葉。

《聖書零葉》イングランド c.1225-35

楽園追放されているのは、何100%さん?

 

広範囲に使われた緑色や人物の顔の厚い隈取りなどは、イングランド写本に共通する装飾。

 

イングランドやフランスでは、ヨーロッパ諸国でいち早く大学を創設神学研究の中心地となり、旧・新約全編を一冊に収めた小型の聖書写本が普及した。

 

 

よく見かける、にょろっと長い装飾楽しい。しかも変な人がいる(好き

《聖書零葉》フランス南西部, トゥールーズ  c.1290-1310

 

一般に、聖書写本が2カラムになっているのは、膨大なテキストをコンパクトに収めるための制約から生まれたデザイン。

14世紀からは大型化、ページ余白に凝った装飾も生まれる。

 

 

詩篇集

キリスト教徒の祈りに重要である旧約聖書の詩篇に、加えて聖歌祈祷文、キリスト教の記念日が記されたなどを収録した祈祷書。

13〜14世紀、イングランドやフランス、南ネーデルラントなどを中心に、一般信徒の私的な祈祷書として人気。


《詩編集零葉》 南ネーデルラント, おそらくヘント c.1250-60

 

鳥<鳥ちゃんが紐引っ張ってるのが可愛い。隣のページと繋がってたのかな?

 

詩篇集の主要な装飾要素は、詩の各節冒頭を装飾する節イニシャル。

本紙葉でも、赤×青、青×金のイニシャルが交互に見られるように、反復デザインが多い。

 

 

聖務日課のための写本

1日8回の礼拝で朗読されるテキストや聖歌を収録したもの。

「詩篇」の朗唱、福音書などの朗読聖歌など、日時や暦によって複雑に変化する礼拝内容をまとめている。

礼拝を信仰する司祭らが使用し、次第に一般信徒にも普及した。

 

 

目がハート<はい変な人いっぱいだよー

ベラルド・ダ・テーラモ(彩飾)《聖務日課聖歌集零葉》イタリア, アブルッツォ地方 c.1340-50

 

聖務日課聖歌集は、聖務で歌われる聖歌を集めたもの。集団で見るために大型で華やかな装飾のものも多い。

 

こんな感じでみんなで見て歌ってたみたい。あと誰かいる!

サン・ピエトロ大聖堂参事会員の聖務日課聖歌集の画家に帰属(彩飾) 《聖務日課聖歌集ビフォリウム》部分 イタリア, ローマ?c.1285-1300

 

ここにも誰かいる!

《聖務日課聖歌集?零葉》カスティーリャ王国, エストレマドゥーラ地方, おそらくサンタ・マリア・デ・グアダルーペ修道院 c.1450-75

 

小さいヘンテコな人見つけると楽しい。

 

続いてしまいます…鳥もいもい

 

▼つづき

 

 


 

図説 中世ヨーロッパの暮らし [ 河原 温 ]

図説 中世ヨーロッパの暮らし [ 河原 温 ]

 

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

会期:2024年6月11日(火)〜8月25日(日)
会場:国立西洋美術館
料金:一般1700円