4月某日、エコロジー:循環をめぐるダイアローグ2「つかの間の停泊者」@銀座メゾンエルメス フォーラムに行きました。

 

 

地球という惑星の「つかの間の停泊者」である私たち人間が抱える環境問題などの危機について、アートを通じてどう考察してゆけるか。

 

自然との関わりからアプローチする4人のアーティストを取り上げ、アートにおけるエコロジーの実践を問う展覧会です。

 

★出品作家:ニコラ・フロック、ケイト・ニュービー、保良雄、ラファエル・ザルカ

 

 

本展は、森美術館で開催された「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」との関連企画の第2弾。

 

▼過去記事

 

 

記録をおサボりしている間に森美は会期終了、本展も今月31日までと迫ってきたのでお急ぎメモです。

今回は、森美でも作品が見られた保良雄ケイト・ニュービーの作品について。
 
 

 

保良雄

 

 

保良雄は「テクノロジー、生物、無生物、人間を縦軸ではなく横軸でとらえ、存在を存在として認めることを制作の目的とする」アーティスト。

本展では3点のインスタレーション作品が相関する。

 

 

そのひとつの《noise》は、原発事故で帰還困難区域となった福島県大熊町の稲藁でできた和紙のドーム。中に入ると、照明が時折点滅している。

 

保良雄《noise》2024
 

 

ところで会場に入ってまず気になったのが、ふいに聞こえてくるドラムの音。
保良雄《noise》2024
 
レッグに石をつけたものがいくつか設置されており、時々天井から水滴がポタッと落ちてきて打面を叩いている。
そういえばドームの足元にも石がついていて、なんだか巨大なドラムのようにも見えてくる。
 
 
後から知ったのだが、実はこの音と和紙ドームの照明は連動していたそうだ。
足元にあった石は福島で拾ったもので、天井から落ちてきていた水滴は福島ほか各地で採取した柑橘の精油水だそうだ(なぜ柑橘なんだろう
 
 
こちらは、19世紀ヨーロッパの天候予測器「ストームグラス」をモチーフにしたオブジェ。
保良雄《cosmos》2024
 
温度などによって変化する結晶の形から、天気を読み取るストームグラス。
本作もガラスの中に結晶が沈殿し、金属片のようなものが静かに回転している。
 
 
素材には「氷河が溶けた水」「アンナプルナで採取した石」などとあって、もうひとつの作品《glacier(氷河)とも繋がる。
そちらは、ネパールはアンナプルナ山の氷が手のひらで溶けてゆく様子を撮影したもの。
 
保良雄《glacier》2024
 

 

サムネイル
 
▼私たちのエコロジー展@森美での作品

保良雄《fruiting body》2023

何億年もかけて自然が生み出す大理石と人工のゴミを溶解したスラグを並置したインスタレーション。

 

 

 

 

ケイト・ニュービー

 

 
ニュージーランド出身のニュービーは、セラミックやガラス、布などの日常的な素材と身振りを用い、その場所の特性を活かして場との関係性を構築するサイト・スペシフィックな作品を手がける。
 
本展の出品作は、現在の拠点である米国テキサスと、栃木県益子町で制作している。
 

ケイト・ニュービー《呼んでいる、呼んでいる》 2023/24

 

色とりどりのウィンドウチャイムは、テキサスで作られたもの。

 

 

300ピース以上の陶板からなるこちらは、益子での協働制作。

ケイト・ニュービー 《いつも、いつも、いつも》2023/2024


 

 

うねり、かすれ、くぼみ、せりあがり、ところどころ水溜りのようになっている。

荒々しい地表のようで素敵な凸凹は、ニュービー自身の体の動きによる痕跡。世界と身体の一体感。

 

 
サムネイル
 
▼私たちのエコロジー展@森美での作品
ケイト・ニュービー《ファイヤー!!!!!!!》2023
森美のある六本木からエルメスのある銀座までの路上の石やガラスが埋め込まれたタイル。天井には青梅市で染められた布が垂れ下がる。
 
 
などなどでした地球もいもい
 

エコロジー:循環をめぐるダイアローグ

ダイアローグ 2 「つかの間の停泊者」

ニコラ・フロック、ケイト・ニュービー、保良雄、ラファエル・ザルカ

 会期:2024年2月16日~5月31日
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム

料金:無料

WEB


「つかの間の停泊者」展では、コンテンポラリー・アートというプラットフォームにて生成される自然と人間のエネルギーの循環や対話の可能性を考察します。

水面下の生態系を主題に撮影を続けるニコラ・フロックは、通常は目にすることのない地球環境や人間活動の領域を科学的に、またコンセプチュアルな手法で記録しています。ケイト・ニューピーは現在住居であるテキサスと栃木県益子町の協働者の手によって作品を生み出し、ささやかな日常の集積や風土を通じて、私たちの身体に親密な触覚をもたらします。鉱石や水などの物質の状態変化に着眼する保良雄は、本展で地球太古の時間に都市の地政学を持ち込むことで、エコロジー思想に含まれる優劣や格差への批判を込めたアプローチを展開します。ラファエル・ザルカは、美術史を再訪しつつ、過去作品の流用と再利用に見出される発見を、エネルギーが新たな回路へ接続するプロセスとして解釈し、建築やアートの生態系を拡張します。ザルカの作品は、東京日仏学院においても展示が予定されています。ほんのつかの間の時間、惑星に停泊するものたちの間のエネルギーの循環や共鳴、そして希望を、アートとエコロジーのアイアローグとして、それぞれの作品から感じていただけるのではないでしょうか。