“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館の覚書

 

3月某日、“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館に行きました。

 

面白いもの大好き!楽しみにしていた展覧会!楽しかったー!!

 

巨大な服に、長ーい服など、世界約30カ国の多様な服飾を「長い」「大きい」「丸い」「高い」といった特徴ごとに紹介。

また、なぜそのような形状になったのか、それぞれの形の意味も解説しています。

 

“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館のチラシ

 

ヘンテコな形にも色々な意味や役割があって、感心しました。

民族衣装を中心に、ユニクロやイッセイミヤケ※1など現代の服も登場。

珍しいものはもちろん、お馴染みのものにも知らないことが色々あって面白かったです。

 

 

“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館の展示の様子

所要時間40〜60分。あるいは2時間半🙃

 

 

たとえばこれなんて、高さが天井まであるヨルダンの巨大ドレス※2なんだけど、その幅251cm、丈341cm!!

“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館より「ソブ・ウッブ」ヨルダンのドレス

ドレス「カラカ」ヨルダン, 20世紀 展覧会チラシより

 

ヨルダンはサルト地方の祭礼用ドレス。

腰に帯をして服をたくし上げ、折り返して着る。

 

さらに、2mもある袖がまた変わってて、右袖は頭にかけて被り布に、左袖は後ろに回して右腕にかけて物入れにする。(着用時の様子👉Pinterest

 

 

こちらは全長227cmコヒスタンの女性用パンツ。

パキスタンの女性用パンツ/“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館より

パンツ パキスタン・コヒスタン, 20世紀 展覧会チラシより

 

膝下部分をクシュクシュっとさせて着る(着用時の様子👉 文化学園服飾博物館

ちょっと平成ギャルのルーズソックスを思い出したわね。

でももっとギチギチになるらしくて、それによって砂が入るのを防いだり蛇などから身を守るんだそう。

 

ちなみに膝下の丈は150cmほど。

ルーズも長いのだと180cmとかなかった?パキスタン超えじゃん(?

 

 

こんなブーツもあった。

ブーツ チェコ・モラヴィア地方キヨフ村 20世紀・“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館

ブーツ チェコ・モラヴィア地方キヨフ村 20世紀 展覧会チラシより

 

長ーい女性用ブーツで、これもルーズソックスのように蛇腹状にして履く。

こちらは動きやすさと、水や冷気を防ぐ効果を持つ。

 

 

一方、腕が長ーいものもある。

上衣「ケリヤ」 インド, 20世紀・“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館

上衣「ケリヤ」 インド, 20世紀 展覧会チラシより

 

ラバリ族の男性用、幅208cm

細かい刺繍が施され、紐状の装飾がぶら下がっている。

 

こちらも長い腕をたくし上げて着ることで、虫の侵入などを防ぐ

コヒスタン女性のパンツ同様、砂漠地帯で生きる工夫から生まれた形。※3

 

そういえば、日本の振袖の袖が長いのは、もともと子供の体温調節のために着物の脇(身八つ口)を開けたものが始まりだそう。袖の形状って大事なんだな。

 

 

幅300〜700cmにもなるシャルワールも、そんな工夫から生まれたドデカパンツ。

パンツ 「シャルワール」パキスタン, 20世紀・“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館

パンツ 「シャルワール」パキスタン, 20世紀 展覧会チラシより


ゆったり布を重ねギャザーで寄せることで、空気を取り込み、防寒・防暑の機能を併せ持つ。

暑い日中は空気を流動させ、熱を発散。

冷える夜には空気を保ち、熱を閉じ込める。

1日の気温差が大きい地域で、着替えずに寒暖に適応する形。

気候の厳しい砂漠や山岳地帯の服は、ユニークな工夫があってとても面白い。

 

 

かわって、こちらはニョキッと高いヘッドドレス。ちょっとテレタビーズ。

頭飾り「タントゥール」シリア,19世紀末〜20世紀初頭・“オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館

頭飾り「タントゥール」シリア,19世紀末〜20世紀初頭


ドゥルーズ派(シーア派から分離独立し、独自の文化を持つ)の女性用。

てっぺんから布で覆う。中世ヨーロッパや中央アジアでよく見られる。

 

▼タントゥールの着用例

Wikimedia Commons


 

 

高底鞋 「ガオデイシェ」中国 19世紀末〜20世紀初頭 “オモシロイフク”大図鑑@文化学園服飾博物館

高底鞋 「ガオデイシェ」中国 19世紀末〜20世紀初頭 展覧会チラシより

 

繊細な刺繍入りのこちらは、満州族の高貴な女性用。

積雪で衣を汚さぬよう厚底になっている。※4

 

同時に、靴底の面積の小ささからグラグラと歩きづらい様子が女性のたおやかさとされた。漢民族の纒足への憧れも反映しているとか。

ハイヒールといい、不安定な感じを女性らしいとするのはどういうフェチですか?※5

 

 

 

…などなど。
書きれないけど、安定のおもしろ博物館でした!

 

 

image

 

あと、この日は近くの「北欧の神秘」展@SOMPO美術館もハシゴしたんだけど、こちらも楽しかった!

帰りに図書館で北欧神話の本なども色々借りて、丸一日ホクホクでした!😆もいもい

 


 

世界の民族衣装図鑑 約500点の写真で見る 衣服の歴史と文化 [ 文化学園服飾博物館 ]

 

“オモシロイフク”大図鑑
image

会期:2024.3.11.月~ 6.22.土
会場:文化学園服飾博物館
料金:一般500円
WEB


世界には私たちがまだ見たこともない、想像を超えるような驚くべき衣服がたくさんあります。それらはそれぞれの国や地域で、気候への適応や外敵からの防御など、生命の維持につながる何らかの意味を持ったり、それぞれの文化で培われた思想に基づいたものでもあります。本展ではさまざまな地域の衣服や付属品などを、「ながい」「おおきい」「まるい」「たかい」などの特徴に分けて紹介します。同時に、フォルムの持つ面白さばかりではなく、どうしてそのような形状になったのか、それぞれの形の持つ意味も探ります。約30か国のバラエティーあふれる衣服からは、思いもよらない発想や驚きの知恵など、私たちの固定観念を超えた多様な衣服造形を感じていただけることでしょう。

 

 

※1:「丸い」のコーナーに、イッセイミヤケの「リズム・プリーツ(1990)」。プリーツの入ったまんまる円に、首と腕を通す切り込みがスッと入っただけで、着るととても優雅なフォルムに。すごくかっこいい。「衣袷」を連想した🥰

※2:ヨルダンのソブ・ウッブ(Thob ubb)も展示。長さ280cm。こちらも折り返して着る。布の重なりで空気の層を作り、衣服の保温力が高まる。

※3:同様の服に、気温差の大きいアフガニスタンのケミスw/脚絆(パイチェ)など。幅広の袖は風通し良く、夜は手先を隠せる。パイチェは虫やサソリから守る。

※4:雨のぬかるみや泥ハネを防ぐ下駄も中国を起源として日本や韓国に広まったとされる。

※5:首長族(ミャンマー・パダウン族)の装身具が「重い」として展示されていたけど、これも不自由さを美とする価値観のひとつ?(首輪や腕輪、足環の総重量10キロ以上)。ハイヒール自体は古代から男女共に履いていた靴で、その役割は背を高く見せることから、道の泥や糞尿避けとして、やがて女性用ファッションへと変わった。近現代では女性が活動的になった1920〜30s、スカートが短くなるにつれ靴が重要アイテムとなり、ハイヒールがポピュラーになった。

 

【もいメモ】

長い▶︎・「ソブ・ムラッダン」シリア・クタイフェ:袖口に赤い三角形のヒダ(104cm)が付いた舞踏用ドレス。ミナレットの刺繍入り。シリアでの三角形の意味は?

・日本の長裃:大名や御目見得以上が着た礼装。ずって履くことで立派に見せた。動きにくさが男性の威厳となるケース。

・パキスタンの髪飾り:ビーズと紐を髪に編み込む。西、南、中央アジアまで幅広く見られる。長く艶やかな髪が健康的女性の証。見えない後ろを邪悪から守る。

・トルクメニスタンのこめかみ飾り:女性用。装飾+揺れる音が魔除けに。

・日本の帯:江戸初期までは幅狭く短い実用的なもの→中期以降、装飾として幅広く長く、結び方多彩に→現代の標準は幅約30cm、長さ4m以上。

・被衣:地域失念。長細い袖は見せかけで背中に垂らしておく。なぜ?

円▶︎・デイドレス アメリカ?c.1865:スカート径150cm。円錐形スカートドレスが1850〜70sヨーロッパで流行。合わせてショールも大型化。産業革命で布の生産効率向上→幅広ふんだん布ドレス流行w/クリノリン。

・ブブ(Boubou)ナイジェリア:ハウサ族の男性用コート、径250cm。貴重な布をたっぷり→富と権力の象徴。強い日差し防ぎ、外気通すため大きい袖。

・チャンティ 中国, 19c末:満州族の女性用。馬に乗るため、深いスリット入り。大きな袖、清朝中期〜の身頃は漢民族衣装の影響。

重い▶︎・テレ・トン(tere ton):ロシアのコート(3700g)とブーツ(2300g)。羊皮そのまま使用。毛面を内側にして保温性保つ。一方、トナカイの毛皮のブーツは毛を外側にして雪をはじく。

・ウルジュ(urje):ヨルダン・イルビット地方の装身具。705g。銀貨とビーズを編んだ飾り帯。後ろは大きなマリア・テレジア銀貨(as 装飾+非公式通貨)

丸い▶︎・丸合羽:江戸時代の男性外出用。防寒・防塵・防雨機能を兼ね備える袖なしケープ。

・16世紀後半〜17世紀初頭、ポルトガルやスペイン人のマント式外装カパ(capa)から着想を得ている。

高い▶︎・コワフ 仏, 19c:地域ごとに特徴異なり、身分や出身わかる。女性は髪を隠すとするキリスト教の考えから広まる。キリスト教でも古くは女性の髪を隠すのが一般的だった。シスターは今も。

ポーランド・ウォヴィチの頭飾り:未婚女性の祭礼用。造花のバラやボールなどが敷き詰められて綺麗なリボン垂れ下がる。