民族衣装-異文化へのまなざしと探求、受容-@文化学園服飾博物館の覚書です。


 

世界の多様な民族衣装が、ヨーロッパや日本においてどのように関心を持たれ、影響を与えてきたかをたどる展覧会。

 

民族衣装について記された書物をはじめ、各地の民族衣装と、それらに影響を受けたヨーロッパのドレスなどを展示しています。

 

出かけたのは11月半ば。

とても興味深かったのに、今頃のメモですダッシュ

 

世界の民族衣装について記録した書物や図絵、印象的だった衣装など。

 

 

 

Tシャツ未知の世界への好奇心(〜19世紀末)

15世紀末の大航海時代より、ヨーロッパの人々はアジアやアフリカに進出、接触した異文化についての記録を進める。

 

19世紀半ばになると、印刷技術の発達などによって関連書の出版が増加する一方、版を重ねるうちに正確性が薄れる問題も出てきた。

 

オーギュスト・ラシネ「歴史に現れた服装(Le costume historique)」1888 Image credit:Wikimedia Commons

 

19世紀フランスの服飾研究家・挿絵画家であったオーギュスト・ラシネの本も紹介されていた。

古代〜近世の幅広い国の衣装を、正確で細密に記している。

日本の着物も「袖をポケットとして使うので、下部が縫われている」などと紹介。

 

 

ラシネの本、私もマールカラー文庫でいくつか持っているけど、このフルカラーで未だに300円くらいで買えてしまうのすごいよね拍手

※「世界装飾図Ⅰ」は新装版が550円になってた。

 

 

 

 

 

一方、日本では江戸時代末期、海外の民族を系統立てて描いた人物絵が見られるように。

なかには想像をまじえて正確性に欠けるものも。

歌川芳幾《萬國男女人物圖會》1861 Image Credit:Wikimedia Commons

 

歌川国芳の門下で、幕末〜明治に活躍した浮世絵師、芳幾による人物絵。

英国やフランス、中国、朝鮮など、世界の国々の名前と民族が描かれ、さらには「脚長国」「小人国」「無腹国」といった想像上の国まであるのが面白いニコニコ


こうした人物絵が増えたのは、ペリー来航外国人居留地などの背景から、異国への関心、居留地土産の需要などが高まったことが挙げられる。

 

 

 

Tシャツより正確な情報へ(20世紀〜)

やがて交通手段の発展探検家や遺跡調査による「発見」植民地主義の加速による人々の往来の増加などから海外情報も豊富になり、民族衣装の学術的な分析や考察も進んだ。

また写真カメラの登場や映像機映画の実用化で、より正確で高精度の情報が得られるようにもなった。

 

 

日本では「大東亜共栄圏」の名のもと、アジア各地の文化を広く調査した記録が残る。

画像は本展チラシより

 

『ジャワ更紗染色工程見本』(画像右)は、藍と ソガの2色で染めるジャワ更紗の工程を、細かく段階に分けて解説した見本。

土産用や輸出用に制作・進出していた関連企業に向けたもの。

 

 

三越百貨店による民族衣装の博覧会。

「世界風俗博覧会」の絵はがき 三越呉服店 1927年 画像は本展チラシより

 

関東大震災による修復工事を終えた記念に開催された。

十数ヵ国のジオラマと民族衣装を着たマネキンが展示(この衣装は現地のものなのかな?

 

 

 

 

そして海外渡航がより容易になった20世紀後半では、現地調査や個人の研究も増加するなど、探求はさらに深まる。

また、安価な大量生産により危ぶまれる染色技術の継承の記録、調査なども進んだ。
 

 

▼服飾学者・小川安朗による民族衣装の5分領

※画像はすべてWikimedia Commonsよりパブリックドメイン

 

 

 

 

Tシャツさまざまな民族衣装

最後に、印象的だった民族衣装についてメモ。

掲載できる展示品の画像がほぼ無いので、関連する画像を参考として添えています。

 

 

アラブ諸国で着られる民族衣装「トーブ(ソブ)」

1920年代、パレスチナのトーブ(thobe/Thawb)Image Credit:Ma'moun Othman via Wikimedia Commons

 

クロスステッチで作られた幾何学模様が特徴的。デザインは地域で異なる。きれいブルー音符


国立民族学博物館 女性衣装(カラク, 1940-50年代制作)Image Credit: Yanajin33 via Wikimedia Commons

 

こちらのトーブは、パレスチナ・ヨルダン衣装研究家ウィダード・カワールの旧蔵品だそう。

カワールは、度重なる紛争や難民問題によって失われていく民族衣装を記録、収集した。

 

 

 

アフガニスタンギルザイ(パシュトゥン族の一派)の民族衣装「ケミス」(画像左)

ハイウェスト、広長袖のワンピース。画像は本展チラシより

 

 

 

イラン周辺遊牧民の食卓布「ソフレ」

Image Credit:Boboszky via Wikimedia Commons (fr/En)

 

ナンを包んで保存したり、広げて食事の敷物に使用する布。

保湿性の高いラクダや羊毛の毛で作られる(参考:LOGOS GALLERY, Tribe-log

 

 

 

インドの「シャルワール(サルワール)」。ラピュタのズボン!

Image Credit: Wikimedia Commons

 

「これを着な」

© 1986 Studio Ghibli

 

 

 

モロッコのフード付きローブ「ジュラバ」

Image Credit:Amine Charnoubi via Wikimedia Commons

 

 

アフリカはハウサ族の「ブブ(boubou)

Image Credit:Eric Draper via Wikimedia Commons

 

高い階級の男性用コート。肩幅を強調。

 

 

 

会場では、こうした民族衣装から影響を受けたデザインのドレスも展示されていました。

画像は本展チラシより

 

 

その逆に、欧米の影響を受けた民族衣装の近代スタイルについても興味深かったです。

たとえば、フリルのついたスカート型の日本の浴衣、伝統衣装にテンガロンハットを合わせるモンゴル人など。

 

互いに影響を受け合って、変わるものと変わらないものが混じり合って、受け継がれていくんですね。

 

Image Credit:Christopher Michel via Wikimedia Commons

 

 

 

本日は以上でございます。もいもいドレス

 

 


【概要】民族衣装-異文化へのまなざしと探求、受容-

会期:2021年11月1日(月)~2022年2月7日(月)

会場:文化学園服飾博物館

あとで見る:Trc Leiden/Malaika12/what s the Moroccan traditional clothes?/Djellaba