安さに釣られて買ったリンゴが、愛兎も食べ残すレベルでク○不味かったので、残りは全てジャムにすることにしました
いまジャムの鍋をかき混ぜながらこれを書いております。こんにちはジャムおばさんです。(言いたいだけ
続いてしまったインド細密画@府中市美術館の覚え書き、後編です。
▼前編
細やかな描線と鮮やかな色彩が美しい、インド細密画120点を紹介する展覧会。
今回は、特に楽しみにしていた「ラーガマーラ」というインド音楽の音色を絵画化した楽曲絵についてメモです。
クロスオーバーする表現、特に感覚を行き交う表現に関心があってラーガマーラにも興味を持ったのですが、自分の想像とも少し違う*1、これまた独特の世界で面白かったです。
音色を絵画化するラーガマーラ
《グジャリ・ラーギニー》ラージプト絵画 c.1720
朝9時〜正午に演奏されるラーガ。動物に囲まれた女性を描くのが定番。ヴィーナを持つ女性を見つめる鹿のような動物はインドレイヨウ(かわいい
芸術の中でも特に音楽を重要とし、独自の発展を遂げてきたインドでは、音楽に関する絵画の数も西洋や日本の比ではない。
なかでも独特であるのが、インド古典音楽で用いられる旋律の型「ラーガ」を絵画で表現した「ラーガマーラ」。
20世紀西洋の画家たちが音楽を抽象画化する遥か昔から、インドでは音色そのものを絵にしてきた。
しかもカンディンスキーやクレーのような図形的な画面とも違って*2 、ラーガは音色自体が神々であり、絵の中に神の姿が描かれたりもする。
《バイラヴィ・ラーギニー》c. 1610-1620 大英博物館 ※展示外
最もよく絵画化されるラーガのひとつ。朝6〜9時に演奏され「神への祈り」を伝える。シヴァリンガに祈りを捧げる女性を描くのが定番。
数多あるラーガは、それぞれ演奏上の複雑なルールに加え、演奏される時間や季節なども定められており、奏者は用いるラーガの規則を守りながら即興で演奏する。
▼朝のラーガ・バイラヴィで「カエルの歌」演奏
ラーガマーラにもまた決まったモチーフがあるが、絵によって雰囲気が異なったりして面白い。
左:《アサヴァリ・ラーギニー》 c.1760
右:《アサヴァリ・ラーギニー》17c後期
午前9時〜12時に演奏される「献身的な気持ち」を示すラーガ。笛を吹く女性と蛇を描くのが定型。
たとえば↑は同じラーガを描いており、笛を吹く女性と蛇の定番モチーフは共通するが、静謐な情景の左に比べ、右は賑やかで装飾的。
インドの音楽と芸術観
《楽器を持つ女》ラージプト絵画 c.1760
弦楽器タンブーラーを持つ女性像。画面上部に細かな遠景を描くのはインド細密画の定番構図。
インドの芸術観では、芸術から受ける人の心の動き「ラサ(感情、味)」を呼び起こすことが目的とされる。
感情に直に訴える芸術である音楽は、そのため特に大切にされてきた。
ラーガはその語源がサンスクリット語の「色」であるように、ただの音楽理論ではなく、音によって人の心を彩るものであり、精神的な意味合いが深い。
(色彩もまた心に直に訴える力があるからこそ、インド細密画は濁りのない鮮やかな色で描かれた)
さらにラーガは人が作るものではなく、世界から発見するものという考えもグッときます🤯
インドの人は、ラーガは世界にもともと存在しており、美は人の心の中にあるものと考えた。
音楽をするとは、世界から発見し、人々の感情を呼び起こすことなんですね。
美は現実世界に内在すると考え、だからこそ本物のように描くことを重視した西洋。
その蓄積をもってこそ遠近法や具象からの解放、色彩や感情、目に見えないものといった写実を超える域にまで到達した。*3
それぞれに異なる美の捉え方、追求の仕方の歴史があって、改めて面白かったですもいもい
おまけ
*1^:音色が描かれたインド絵画は、情景から音を考えたり音から言葉を考えたりという自分の作業とも近いものがあるかなと思ったが、なんかそういうのとも違った。もっと一体的というか壮大というかなんかすごい(語彙力)。後述するラーガの「世界で発見するもの」という考えが、自分が過去に得た感覚と似たようできっと違うのもそう。たぶんもっと広く外の視点。
*2^:彼らはクラドニ図形などは知っていたのかな?なんで音楽の絵は図形っぽいのが多いんだろ?自分はもう少し空気っぽい空間的なイメージ。共感覚者じゃないのでただの連想だけど。
*3^:一方で、写実の西洋でも中世ではキリスト教の影響によって現実よりも神の世界や視点、その教えを広めることが目的とされ、ルネサンスで再び人間視点や自然主義の写実性を回復するまでは、平面的で形式化された描写が続く(鮮やかな色彩、豪華な装飾も神聖さを際立たせた)。
平面的で強調したいものを大きくとらえる非現実的な描写は、聖なる存在が霊的な世界にいることを示す合理的な描き方であったとされる(ある意味で抽象画?
それって子供の絵にも似ているけど、そういえば子供は神とか霊的な世界と近いとも古くから言われる。と考えていたら思い出した:自分は表現写真を学び始めた時、それまで情報的な写真を学んでいたので先生から「下手になるよ」と言われて、それがどこかずっと呪いのようだったけど、あるとき歴代の画家たちの変化を見ていたらフッと、むしろ進化なんだと腹落ちした。学び恐れず超えていくこと。
あるいは、写実に欠ける描写は偶像崇拝を避けるためとも。ビザンティン、モサラベ様式、イスラム(ユダヤ)と他宗教地域の美術への影響関連をもう少し要調べ。
▶️祈りの場所はその度ごとに壊す、という説明がどこかにあった。破壊と再生のシヴァと関係する?破壊と再生の神多すぎ問題。死の捉え方。