すっかりサステナ入線のブームに乗ってしまって・・
西武鉄道に負けず、サステナ車が欲しくなって当線にも入線させてしまいました。
さて入線した2両は今回も軽いバリ取りで終了しました。
やっぱり最近の電車はみんな同じような顔の新型電車に見えちゃうんですよね。
(当線は40年前までの車両しか知識免疫が無いのでそれ以降がわかりません)
それでも昨今のサステナ車ブームに乗ってちょっと勉強し直しました。
小田急8000形は当時最大勢力だったお馴染みの初代5000形の置換え用に登場したんですね。
1982年~1987年に160両が4両固定・6両固定の編成で製造(日本車輛製造・川崎重工業・東急車輛製造)されました。
当初は界磁チョッパー制御で電力回生ブレーキ仕様でしたが初期の8251×6・8255×6編成を除いてIGBT素子のVVVFインバーターに置換えられているんですね。
ちょうど西武鉄道に譲渡された8261×6編成はIGBT素子のVVVFインバーターの車両なので、
今後の増車についてはもちろんこちらの車両になるんでしょうね。
いつも耳で楽しむ駆動方式(吊掛け駆動・カルダン駆動)ばかり調べては遊んでいるので、
今回のような比較的新しい電車になるとアタマの中がゴチャゴチャになっちゃってサッパリわかりません。
そこで今回はいい機会なので電車の制御方式をもう一度勉強し直すことにしました。
もし、よろしかったら最後までお付き合い頂ければ幸いです。
さて、まずは基本となるメインパーツと言ったらやっぱり主電動機(モーター)ですよね。
【電車のモーター「直流モーター(DC)と交流モーター(AC)」】
電車の主電動機(モーター)は古くから直流モーターが主流でしたが、今ではインバーター制御の発達で交流モーターが主流になっています。
・直流モーター(DCモーター)は電圧に対して回転速度が安定しているので使い勝手が良くてコストを抑える事が出来ます。
但し、ブラシと整流子を使用しているのでノイズや回転にムラがあるんです。
しかもブラシと整流子によって摺動接触させながら回転子に電流を流すしくみなので摩擦摩耗部品の保守管理が大変なんです。
・交流モーター(ACモーター)は周波数に応じて回転速度を保つため耐久性があるんですが、速度制御の動作には不向きです。
しかし近年はインバーター制御の発展とともに周波数を「ベクトル制御方式」にすることで回転速度とトルクは直流モーターと
同等またはそれ以上の性能が可能だと言われています。
【電車の制御】
まず走らせるためには動力となる主電動機(モーター)へ流れる電気を継続的に可変速させて運転するので「電力変換装置」が必要になります。
・抵抗制御方式は抵抗回路とカム軸のスイッチを使ってカチャカチャ切り替えて流れる電力を制御する方式です。
ところが動くのでこのカチャカチャ切り替える接点が消耗したり、抵抗器から放出される熱対策が必要になったり
とにかくエネルギーロスが大きいんですね。
【ダイオード登場】
やはり電気回路関係は半導体の発明によって大きく変わりました。
その画期的な製品と言うのがダイオードなんです。
ダイオードは電圧の向きによってON・OFFを切り替えられる画期的な半導体なんですね。
交流を直流に変える水銀整流器に代わる小型・軽量のシリコン整流器にダイオードが使用され交流電車を実現する上で大きな役割を果たしました。
さらにダイオードのONする時期を制御できるサイリスター(半導体スイッチ)の登場によってMG(電動発電機)に代わるSIV(静止型電源装置)など様々な形のチョッパー制御が出来るようになりました。
チョッパー制御はそれまでモーターへ流れる電圧の制御を抵抗回路とカム軸のスイッチで行っていたのをサイリスターのON・OFF時間を使って制御出来るんですね。
まさに半導体の技術で機械的なスイッチの制御から電気的なスイッチの制御に時代が変わったんですね。
チョッパー制御の新しい主回路装置の開発・実用化が進んだ結果、回生ブレーキの利用も拡大しました。
回生ブレーキは電車の減速時にモーターを発電機として利用してブレーキ力を得る方法で発電した電気は架線に戻して他の電車が使う事が出来るんです。
ところがサイリスターにも欠点があります。
サイリスターはONさせる時期だけ制御できましたが、OFFさせる時期は逆方向に電圧を加える回路が必要なんです。
しかもその回路構成が複雑になることから直流電源に接続するサイリスターは使用用途が限られていたんですね。
【GTOの登場】
しかしさらなる半導体技術の進歩でOFFの時期も制御できるGTO(Gate Turn Off サイリスター)が登場します。
このGTOの登場でVVVFインバーター(Variable Voltage Variable Frequency:可変電圧可変周波数)と
交流誘導電動機の組み合わせでインバーター制御が広く普及することになりました。
インバーター制御は電気的スイッチである半導体のON・OFFを高速で切り替えることで直流を交流に変換しており、
出力される交流電圧の制御にはPWM方式(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)が広く利用されています。
PWMは半導体がONしている割合(パルス幅)で電圧を制御する方法なのです。
このように半導体のON・OFFしている時間の割合や1秒間に+と-が切り換わる回数(周波数)を調整することで
交流モーターへ出力する交流電圧の大きさと周波数を制御しています。
このGTOを利用したインバーター装置は1980年頃から2000年頃までに新製された車両に広く利用されて1秒間に500回程度のON・OFF切換え(スイッチング)ができました。
大容量のGTOを使用する事で1台のインバーター装置で8台の誘導電動機を一括制御する電車も登場しています。
1秒あたりのスイッチング回数(スイッチング周波数)を段階的に変化させる「パルスモード切替」が行われ速度によって
磁歪音(通電による伸縮で発生する音)が変化しています。
主電動機に電気を流す際にはどうしても発生する音なのであの有名なドレミファ♪の音階を放つ遊び心あるインバーターも登場しました。
しかしこのGTOインバーター装置の小型化・軽量化にはゲート電流を流すための転流回路が必要で大きな制約となっていました。
近年、電車で使用している耐圧・電流容量クラスのGTOは国内製造が終了していて保守用部品の確保にも課題が出てきてしまい
今では急速にGTOインバーターの車両は減少しているわけなんです。
【IGBTの登場】
そしてさらに技術は進み、現在はIGBTという半導体素子を使用したインバーター装置を搭載しています。
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスター)はゲート端子に加える電圧の大きさだけでスイッチングできる特徴があります。
IGBTインバーターが導入されはじめた1995年頃には耐電圧が1,700Vと低かったので直流1,500Vの電車では3レベル方式の回路構成で対応しましたが2000年頃にはIGBTの耐電圧も向上したので2レベル方式の回路構成となり必要な素子の数が半減したので小型化・軽量化に有利となりました。
交流電車は車上で交流を直流に変換してそれ以外は直流電車と同じ制御装置を使用しています。
半導体技術の進歩により交流を直流に変換する電気機器もシリコン整流器からサイリスター位相制御整流器、PWMコンバーターに変化しています。
PWMコンバーター(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)は1990年に登場した300系新幹線を皮切りに普及しました。
ところがチョッパー制御やPWMコンバーター、VVVFインバーターは高速でON・OFFを繰り返す事から電気的ノイズがどうしても発生してしまいます。
当然、これらの装置には信号・保安装置といった地上鉄道設備の動作に悪影響をあたえない事が求められるわけです。
このような背景もあって現在の交流電車はコンバーター部は3レベル、インバーター部は2レベル方式の車両が主流になっています。
そしていよいよ主電動機が誘導電動機(交流モーター:ACモーター)の時代に突入していくわけです。
【交流モーターのベクトル制御】
当初は「V/f一定・すべり周波数制御」という方法でモーターに加わる周波数(インバーター周波数)とモーターを回転する電気的な速さ(周波数)の差で誘導電動機が力を出すためには欠かせないものなのです。
モーターの回転速度の上昇に応じてモーター電圧(V)を制御すると同時にインバーター周波数(f)を増加させます。
モーターのトルクはV/fの比率(傾き)とすべり周波数の大きさによって制御しています。
この方式は半導体のON・OFFを決めるための計算量が比較的に少ない点が特徴なんです。
しかし今では「ベクトル制御方式」と呼ばれる制御方式が主流となっています。
この「ベクトル制御方式」はモーター電流を磁界に寄与する成分(励磁分電流)とトルクに寄与する成分(トルク分電流)に分解してそれぞれを個別に計算しながらモーター電圧とすべり周波数などを制御してモーターを回します。
座標変換や各成分の個別計算が必要となることから計算量も多く高い処理能力を持つマイコンが登場するまで実現が困難だったんですね。
しかし「ベクトル制御方式」ではそれまでの「すべり周波数制御」よりも早く細かいトルク調整が可能となって車輪の空転や滑走によって加減速性能が低下してしまうことを防ぐための再粘着制御の高性能化に寄与しています。
【SiC(炭化ケイ素)の登場】
2011年頃からはシリコンベースのIGBTよりもON・OFFの切替が速くて高温条件下での動作性能が安定しているSiC(炭化ケイ素)半導体を電気スイッチに利用したインバーター装置の適応拡大が次第に進んでいます。
SiCは動作損度範囲が高いことから放熱器の冷却性能を見直すことで装置の小型化・軽量化につなげることができます。
またON・OFFの切替速度をシリコンベースの半導体素子よりも速くすることで2レベル方式でも高いEMC性能の確保にもつながります。
PMSM(永久磁石同期電動機)の適用と回生ブレーキのみが動作する速度域の拡大(電気的ブレーキだけでは十分な減速度が得られない場合、機械ブレーキも同時に使用されています)などにより従来のGTOインバーター車と比べて消費電力量を30%削減したとの報告もあります。
これからもハイブリッド自動車や電気自動車の普及が拡大するのにつれて電車の制御方式も高度化・高性能化へ向かうでしょうね。
将来的には加減速指令を受け取る無線通信装置を内蔵したインバーター装置を主電動機と一体化させたら全自動運転する電車が実現するんでしょうね。
さて、長々と書きましたが単なる機械屋の安易な知識なんであまり参考にならない事を付け加えてさせて頂きます。
まぁ~それでも入手したBトレインショーティ-から再度勉強し直すのも楽しいもんです(笑)