新型コロナウイルスの第5波で病床がひっ迫して自宅で亡くなる人が相次いだことから、厚生労働省は、第6波に備えて、この夏に入院が必要だった患者を1万人近く上回るおよそ3万7000人を受け入れる体制を確保したと明らかにしました。

ことし夏に入院が必要だった人数を1万人近く上回る体制

厚生労働省は、今後、第5波の2倍程度の感染拡大が起きた場合は、ワクチン接種や治療薬の活用などを進めても、入院患者の受け入れ人数を2割増やす必要があるとして都道府県に体制の整備を求めていました。

その結果、全国の医療機関などで受け入れができる入院患者は、先月末の時点で合わせて3万7333人となりました。

この夏に入院が必要だった人数を9631人、率にして35%上回るということです。

第5波では多くの医療機関で医師や看護師などが不足し、病床の使用率は平均で68%にとどまりましたが、今後は82%に引き上げるとしています。

そのため、医療体制がひっ迫した場合に応援で派遣できる医師と看護師を、地域のクリニックなどと協力しておよそ3000人ずつ確保したということです。

このほか、臨時の医療施設や入院待機施設での受け入れも、この夏のおよそ900人から、3400人に増やすとしています。

また、第5波では、保健所の業務もひっ迫したことから、感染拡大のピーク時には保健所以外の職員を投入して平常時の3倍の人数で対応にあたる体制も確保したということです。

さらに、ホテルなどの宿泊療養施設をこの夏から4割増やして、全国でおよそ6万6000室確保したほか、地域の3万4000の医療機関などと連携して、オンライン診療や在宅診療などを行う体制も強化したとしています。

都内の病院「これ以上コロナ病床増やすと入院や手術ができない」

7日公表された計画にコロナ病床として55床の確保を報告した都内の医療機関からは、入院の制限など一般診療に影響が及んでいると指摘する声があがっています。

東京 杉並区にある「河北総合病院」では去年の春に軽症や中等症のコロナ患者向けの病床を36床設けてから、感染の波が訪れるたびに数を増やし、この夏の第5波以降は55床まで増やして対応してきました。

その一方でコロナ病床を増やすために医療人材の確保や、研修の実施、コロナ患者の動線を分けるゾーニングなどで多くの労力を使っていて、病床も人員もぎりぎりの状態で運用しているということです。

また、コロナ病床を増やすに伴ってこの夏の第5波以降、一般診療を制限せざるを得ず、いまも一般の患者で入院を待ってもらうケースが出ているということです。

河北総合病院の岡井隆広副院長は「第5波の時も発熱外来やワクチン接種など病院が担ってきた業務を地域のクリニックなどに担ってもらい、ようやく我々は入院患者の対応にあたることができた。病床も人員も無限にあるわけではないので、これ以上コロナ病床を増やすと一般の患者の入院や手術ができなくなるぎりぎりの状態で回している」と話していました。

そのうえで「限られた病床を有効に使ってもらうためにはコロナに感染しないことがもっとも大事なので、オミクロン株など新たな脅威はあるが基本的な感染対策の徹底をお願いしたい」と話していました。

自治体担当者 オミクロン株の感染拡大に不安も

都道府県でこの夏に入院が必要だった人数に比べて受け入れが可能な人数が最も増えたのは、愛知県で1077人の増加、次いで東京都が976人、大阪府が682人、北海道が579人の増加となっています。

受け入れ人数を増やした自治体によりますと、病棟を新型コロナ患者の専用にしたり、入院患者にも対応できる臨時の医療施設を新たにつくったりしたほか、看護師の配置を見直して人繰りを効率化したということです。

一方、世界で報告が相次いでいるオミクロン株について、自治体の担当者からは「感染が拡大すれば、今回の計画を上回る“想定外”の事態が起きる可能性もあるが、一般医療との両立を考えるとこれ以上は受け入れを増やせない」とか、「受け入れ体制を確保したとは言え、第6波の規模がどれほどになるかが分からず、本当にこれで大丈夫なのか不安だ」といった声も聞かれています。