東京オリンピックまで1年 開催について世界の意見は… | 親父と息子の口喧嘩

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ある親父とある息子が、社会の色々な事柄について論じます。
こんなことを考えている親子もいるのかと、ぜひぜひ少し覗いてくださいな。

 1年延期になった東京オリンピックの開催について、NHKが世界のオリンピック委員会や国際競技団体に取材したところ、できるかどうかの判断は半年前までにはすべきだとか、来年できなければ中止が適切だなどの意見が聞かれました。

新型コロナウイルスの感染が世界で続く中、NHKは1年後の東京大会の開催について世界がどのように見ているのか、先月から今月にかけて、各国や地域のオリンピック委員会や国際競技団体にアンケート用紙を送るなど取材を行い、
▼オリンピック委員会は206のうち19、
▼国際競技団体は33のうち3つの、
合わせて22の委員会や団体から回答を得ました。

この中で、「いつまでに開催可否を判断すべきか」質問したところ、22の回答のうち16が、開催の判断は少なくとも半年前までにはすべきだとの意見でした。

具体的には、「選手が最高の結果を出すための準備期間として十分な時間がとれる」(スロベニア)として『9か月前の10月まで』、
「開催国とIOCがウイルスの進展を見守るのに十分な時間がある」(デンマーク)として『年末まで』、
「延期の決定もこのころだったので、半年前の通知が公平だ」(柔道)として『開催半年前まで』などの意見がありました。

一方で、感染者数が世界で2番目に多いブラジルの委員会は「日々刻々と状況が変わる中で、いつ判断すべきかを言うことはできない。IOCやWHO、日本の医療界などの専門家が正しい決断をしてくれると思う」と述べました。

また、「来年夏にできなければ、中止か、再延期か、どちらが適切か」との質問には、「出場が決まっている選手には一生に一度のチャンスだ」と『再延期』を求める声がウガンダの委員会など5つからあった一方、7か月後の冬の北京オリンピックへの準備などを理由に『中止』とする意見も15ありました。

なかでも、スリランカの委員会は「再度の延期は膨大な費用がかかり、選手も同じレベルのパフォーマンスができないだろう」と指摘し、選手を派遣する側からの開催に対する意見が聞かれました。

さらに、「日本や世界で終息が見えておらず、ワクチンがまだ使えないことが不安だ」(トンガ)とか、「すべての参加者の安全を最も重要な優先事項に、準備と運営を行っていると全面的に信頼している」と(近代五種)いった声も寄せられ、開催にあたっての最大の課題となった新型コロナウイルス対策に、世界が注目している様子がうかがえます。

アンケートに寄せられた声

アンケートなどで取材に応じた世界のオリンピック委員会と国際競技団体からは、このほかにもさまざまな意見が寄せられました。

回答団体
▼オリンピック委員会回答あり(19/206)
スロベニア、トンガ、ドイツ、デンマーク、ラオス、ミャンマー、スリナム、バングラデシュ、UAE、スリランカ、アメリカ領サモア、コソボ、ウガンダ、ブルキナファソ、シリア、コロンビア、メキシコ、南スーダン、ブラジル
▼国際競技団体回答あり(3/33)
近代五種、ホッケー、柔道

コロナ懸念も、運営に信頼

東京オリンピックの選手派遣に不安を感じているかについて、22の回答のうち
『はい』は5、
『いいえ』は17となりました。

「はい」としたところは
「新型コロナウイルスの状況がなくならないかぎり、参加者、特に選手たちの健康を心配している」(スリランカ)
「世界的な感染拡大に終わりが見えない」(南スーダン)
などの声がありました。

一方、「いいえ」としたところは、
「東京は安全な大会をホストしてくれると確信している」(デンマーク)と大会運営に信頼を寄せたほか、
「私たちは医療専門家チームとともに永続的に状況を監視しており、組織委員会、IOC、WHOから提供される情報を追っている。それらの情報は開催に向けて妥当で、信頼できる準備が行われていることを示している」(ドイツ)と回答したところもありました。

具体的な不安は

大会に向けて具体的な不安について聞いたところ、
「アスリートたちのトレーニングは困難を極めている。また、すでに予選を通過した選手たちが、ずっとよい状態を保ち続けるのは不可能だ」(スリナム)と選手の練習環境があがり、
「多くの国が国境を閉鎖しているため、予選の通過を目指すわれわれの努力が妨げられている。予選大会の延期によって、われわれの準備が影響を受けている」(トンガ)と切実な声も聞かれました。

無観客には否定的

また、観客はどの規模までなら認められるかについて聞いたところ、『社会的距離を取るため、観客を半分などに減らした規模』が22の回答のうち11ありました。
一方、『大勢の観客を入れる、通常どおりの規模』の回答も3つあり、
この中には「巨大なイベントなので観客数を減らすことは不可能だ」(スリナム)という意見もありました。
また、『その他』を選んだ中には、
「感染状況と科学に従うべき。安全なら観客の入場が認められ、安全でないのなら無観客で行うべきだ」(ウガンダ)や、
「観客は選手たちをやる気にさせ刺激できる存在で、オリンピック精神を構成するうえで欠くことのできない重要な一部分だ」(柔道)との声も寄せられました。
『無観客もやむを得ない』を選んだ回答は、22の中で1つもありませんでした。

簡素化は選手への影響少なく

延期で多額の追加経費が予想され、IOCと組織委員会が大会の見直しを検討する中、どこを削減すべきかについては、
「経費削減の大きな可能性があるのは式典と考える。これは大会、そして選手たちにとって、もっとも影響が少ないところでもある」(柔道)や、
「エンターテインメントの削減。開会式と閉会式で実施されている花火の膨大な費用を削減し、レーザーショーと入れ替える」(スリランカ)といった意見もありました。

五輪は真夏が妥当

大会では厳しい暑さが懸念されることから今後のオリンピックを真夏に行うことが妥当かも聞きました。
22の回答のうち、
『はい』は18、
『いいえ』は3でした。

『はい』としたところは、
「多くの参加者が参加可能な時期」(ブルキナファソ)
「真夏のオリンピックがすばらしい大会になる確かな可能性は歴史が示している」(ホッケー)などとしました。
『いいえ』としたところからは、
「暑い夏の天候は選手とすべての関係者にとっての不安材料になり得る」(スリランカ)との意見がありました。

組織委員会・IOCに何を求めるか

そして、組織委員会に向けては、
「延期された大会準備の進展状況について、これからも情報提供を続けてもらいたい」(ラオス)、
「新型コロナウイルスで選手が直面するかもしれない障壁を回避できるよう、あらゆる可能性を考慮してくれると確信している」(スリランカ)
との声がありました。

最後に、IOCに求めるものを聞いた中には、次のような声がありました。
「IOCおよび世界はすべてのアスリートを支え、これまでと同じ練習が続けられるよう、戦略的に取り組んでいかなければいけない。なぜなら、すでに正しく、専門的かつ適切な場所で練習を始めている国もある一方で、できていない国もあるからだ。われわれはすべての選手が公平にトレーニングできるように取り組まなければならない。IOCからコロンビア、また世界へ向けられたすべての支援と希望あるメッセージ、また、やさしいことばに感謝したい」(コロンビア)。

ブラジル オリンピック委員会は

新型コロナウイルスの感染者が世界で2番目に多いブラジルのオリンピック委員会の会長がNHKのインタビューに応じ、東京オリンピックに向けた選手たちの練習環境が確保できていないなか海外に選手強化の拠点を移すなど試行錯誤している選手強化の現状を語りました。
ブラジルオリンピック委員会のパウロ・テイシェイラ会長は、1年延期となった東京オリンピックまであと1年となるのを前に、NHKのオンライン形式でのインタビューに応じました。
テイシェイラ会長は、国内での新型コロナウイルスの感染者数が200万人を超え、世界で2番目に多くなっていることを踏まえ、「ブラジルは選手たちにとって安全な状況ではない。家などで練習を続けざるをえず、仮に予防策を整えた施設に選手を集めて練習させたとしてもそれ以外の日常生活を管理することはできない。長期的な練習計画を作成することすらできていない」と述べ、国内での選手強化の難しさを説明しました。
こうした中、ブラジルオリンピック委員会は感染者が比較的少なく良好な関係を築いてきたヨーロッパのポルトガルに選手たちを派遣し、数か月間、拠点をおいて練習を行う異例の決断を行い、今月17日に第1陣となるおよそ70人の選手たちがブラジルを出発しました。
テイシェイラ会長は「ブラジルにはマラソンスイミングの世界チャンピオンがいるが、家に海の環境を作ってあげることはできない。彼女は基礎トレーニングしかできないのです。そう考えてポルトガルに行かせることを決めた。選手にはメンタルの面でも明らかにいい影響が出ている」とその理由を具体的に説明しました。
またテイシェイラ会長は来年の東京オリンピックを開催するにあたっては選手や観客の安全が確保されることが重要で、ワクチンの開発は最重要課題だという認識を示したうえで「私たちは日本が困難を克服するスペシャリストであることを知っている。1年後にオリンピックを開催できることを信じている」と述べ、来年の開催に期待を示しました。

スウェーデンの金メダリストは

北欧スウェーデンのセーリング代表でロンドンオリンピックの金メダリスト、31歳のマックス・サルミネン選手がNHKのインタビューに応じ、新型コロナウイルスの影響を受けるなかでの練習環境や1年延期されたオリンピックへの思いを語りました。
サルミネン選手は東京オリンピックで2つ目の金メダルをねらうセーリングの有力選手で、自宅のあるスウェーデン南部都市マルモの海やジムで遠隔指導を利用しながら練習を続けています。
サルミネン選手は新型コロナウイルスの影響を受けた練習環境について「海外の練習パートナーがウイルスの影響で国境を越えられなくなって、多くの練習をひとりでやらなくてはならなくなった。練習パートナーがいないと海での練習で必要な風や波の影響による速度チェックなどができず海での練習が減ってしまった。これがいちばん大変なことでその分、ジムの練習が増えた」と話しました。
そのうえで「スウェーデンの感染のピークは1か月前で、それから一貫して減少傾向にある。すべてがうまくいっていると思っていたが10月に世界選手権が予定されているスペインで再び感染が広がっていることが分かった。状況はすぐに変化するので2か月先のことも読めないのは困ったことだ」と率直な胸の内を語りました。
来年の東京オリンピックは各国や地域の感染状況によってはすべての選手が参加できない可能性もあるとしたうえで、「自分ではどうにもならないことを心配しすぎるのはよくない。自分の気持ちを高めるためにも1年後にオリンピックはあると自分に言い聞かせている。誰もが自分のベストを発揮できる大会であればいいが、そうではなかったとしても、僕はどんなチャンスでもつかみ取ってオリンピックに出場したい。これまでずっと頑張ってきたので、スタートラインに立つためならばリスクも取る」と、オリンピックに向けた思いを熱く語りました。