首里城の火災をきっかけに、文化財の防火対策が課題となる中、NHKが江戸時代以前に建てられた木造天守のある全国12の城を調査したところ、スプリンクラーが設置されているのは2か所にとどまるなど十分な対策が進んでいない現状が分かりました。
正殿など7棟の建物が全焼した那覇市の首里城の火災では、法令上の問題はなかったもののスプリンクラーが設置されていなかったほか、火元の正殿1階には炎や熱を感知するものよりも早く火災を知らせる煙に反応する火災報知器がないなど、専門家からは設備が十分ではなかったとの指摘が上がっています。
NHKが、国宝や国の重要文化財に指定されるなど歴史的価値が高く、江戸時代以前に建てられた木造天守のある全国12の城の天守を調査したところ、スプリンクラーを設置しているのは、兵庫県の姫路城と島根県の松江城の2か所だけだったことが分かりました。
設置しない理由について、「文化財を傷つけるおそれがある」とした城が5か所あり、「山の上にあり水の確保が難しい」や「設備の重さで耐震性に問題が生じるかもしれない」と回答したところもありました。
また、煙に反応する火災報知器を設置していない城も2か所ありました。
市民防災研究所の坂口隆夫理事は「法令で定められた設備は最低限で、文化財を守るにはそれ以上の対策が必要だ。スプリンクラーなどの設置を積極的に検討すべきだ」と話しています。
首里城の火災を受けて、文化財の防火対策を強化しようという動きも出てきています。
名古屋市は11月28日、名古屋城の天守閣を木造で復元する際にはスプリンクラーをおよそ800個設置する方針を表明しました。
また、奈良県の荒井知事は11月26日、国宝などの建物の防火対策を後押ししようと独自の条例を制定する考えを明らかにしています。
一方、積極的に防火対策に取り組むケースもあります。
姫路城では、世界遺産に登録された平成5年から消防や文化庁などと基本計画を策定し、およそ10億円かけてスプリンクラーを導入しました。
火災報知器は、煙と炎の揺らめきに反応する2つのタイプのものを天守の各階に設置しています。
その数は法令で定められた数を上回る603個。
防災監視室にはその報知器の反応をモニターする独自のシステムを導入しています。
66台設置された防犯カメラとも連動していて、感知した煙の濃度や場所、その時の映像を瞬時に把握し、消防と共有する仕組みになっています。
また設備だけではなく防火訓練も頻繁に行っています。
消防への通報訓練は毎日行っているほか、首里城では年1回しか行っていなかった放水訓練も毎週行っていて、屋内で火災が起きたことを想定し天守の内部に設けられた消火栓からホースを取り出し、実際に放水しています。
姫路城管理事務所の防災担当の安信光浩さんは「首里城の火災は、同じ文化財を扱っているものとしてひと事ではない。訓練を行うには騒音で迷惑もかける。ここまで訓練を行うのは市民の理解が欠かせない」と話していました。