梨を食べた。シャクっと歯が通り、冷えたみずみずしい果汁が口いっぱいに広がっていく。ああ、美味しい。むしゃむしゃと口を動かしていたら、目の前で大きいお姉さん方のお話が始まった。
どうやら梨というのはグデてはいけないらしい。ぐでるとは何ぞや?と脳内でテロップが流れる。気になってはいるのだが、惰性で動く手の運びによって一瞬無心に戻ってしまう。何食わぬ顔で耳を傾ける。
アレやコレやとワーワー言っているが、要は洋梨のような食感は美味しくないようだ。ご年配なら尚更そちらの方が美味しく食べられるだろうに。
個人的には洋梨のようなシャクっとしない、しっとりした歯触りのものが美味しいと思う。いわゆる、グデた梨。そもそもそのような基準は個人が勝手に思っていれば良いもので、わざわざ共有して確かめ合わなくても良いではないか。自身の気持ちが多少なりとも騒ついてしまった。疲れているのか、はたまた常日頃より不平不満を聞かされてるせいか、反骨心が昂っているのか。
思うのも共有するのも勝手だが、権力者による有無も言わせぬ断固な否定や、強要じみた会話を耳にすると不快な気持ちになる。じわじわと旋律を合わせていくような同調の和は、側から見ても心地よいものではないだろう。まあそれも属する各々の勝手だからと、少々合点のいかない回答を自分の心の中で呟き、また大きく頬張った。
少しばかり、尖ってしまったのかな。そんな自分がいるかもしれないと、不安になった。