さて、話は戻りますが、先ほどの少女・オグニは花嫁のヒトガタがことのほか美しく作られているのがうらやましくてなりません。
よく見るヒトガタは、足が短く、よく太ってずんぐりとしているので、幼いオグニにはとても不恰好に見えていました。それに比べたら、今日の花嫁のヒトガタは流行の服を着て、スラリとしています。ヒスイや珠の装飾は付いてはいませんでしたが、オグニにはとても素晴らしいものに思えました。
「どうしたんだい?」
ヒトガタを見るなり、じっと動かなくなったオグニに、少し年上の少年・オウウが声をかけました。
「あのヒトガタを見て」
「ヒトガタ?あれがどうかしたのかい?」
「どうかしたかですって?とても美しいと思わない?」
うっとりとしたオグニの姿に、オウウはあきれたように
「そうかなあ。やせてギスギスしてるし、あんまり上手とは言えないだろう。そもそもヒトガタは子だくさんとか豊穣を願うまじないのためなんだから、あんな貧相なんだったらちっとも意味がないじゃないか」
「わたしへのヒトガタが、そんな不恰好なものばかりだったら、私は一生誰とも結婚なんかしないわ」
不機嫌そうなオグニの言葉に、オウウはあわててこう言った。
「じゃあ、すごく美しい最新流行のヒトガタなら、俺のを選んでくれるかい?」
「もちろんよ。オウウのだったら、どんなのでもかまわないわ」オグニは満面の笑顔でそう答えました。
オグニはこのムラの一番の有力者であるムラ長の娘でありましたが、幼い頃から見目麗しく、利発で活発でありながらも心優しい少女でしたので、誰からも好かれ可愛がられていました。
一方、オウウはオグニより少し年上の少年で、山の民の一族でありました。
山の民はその名の通り山に住み、イノシシやシカを弓矢でしとめては家族で食べたり、オグニの家のような畑の持ち主のところに持ちこんで、ドングリや栗などの作物と物々交換をしてもらっていました。
オウウの父親もそうした猟師の一人で、ムラへは必ずオウウを伴っていましたので、二人はずっと小さい頃から顔見知りでした。
オウウが十二歳になったとき、父親から弓矢の一式をもらい、打ち方を習うと、みるみる上達し一人でキジやカモなどをしとめられるようになりました。
すると早速、自分で捕った獲物を手に一人で山を降りて、オグニに届けるようになりました。オグニはそうしてオウウに度々会えるのがうれしく、そうして二人はとても仲良しの幼馴染みとなっていきました。
そうして穏やかに数年の月日が流れていきました。