『500円玉貯金』 あべせつ
自営業手伝いの主婦である。
毎月決まったお手当てをもらえるわけではないので、ヘソクリとして500円玉貯金をしている。
毎朝チラシを見比べて特売のものに赤ペンで丸印をつけ、少しでもお買い得なものを吟味する。そして燃料代がかからないようにと車はやめて、自転車であちこちの店へ買い物に走り回る。
お米やネコのトイレ砂のような重いものも、荷台にヒモでくくりつけ『ヘソクリ、ヘソクリ』と呪文を唱えながら、登り坂を一歩一歩自転車を押して上がる。
酷暑にもエアコンは入れない。窓を開け放し、体を濡れタオルで冷やしながら扇風機にあたって涼をとる。
そうして浮かした分のお金を、自分へのごほうびとして500円玉貯金する。
郵便局でもらった高さ10センチにも満たない小さなポストの形をした黄色い貯金箱。
この中にわたしの小さな夢が詰まっている。
これがいっぱいになったら、何を買おう。
靴を新調しようか?いやいや、たまには家族で美味しいものを食べにいくのも悪くない。
本棚の一番上の棚に乗せた貯金箱を見上げると朝日を浴びて金色に輝いている。
2ヶ月が経った。
そろそろ満杯に貯まった頃だ。
爪先立ちをして貯金箱を棚から下ろすとズシリと重い手応えが・・・ない。
あわてて底のゴムを外して中をのぞくと空である。
慌てるわたしに、父親が
『ああ、そこの小銭、わしが煙草銭にもろうてたで』
わたしが入れる、父親が出す。
これをこの2ヶ月毎日やっていたわけだ。
『そんなアホな・・・』