
当時友人と私は同じスポーツクラブにいて、私生活の立ち入った話なども交わした仲でした。けれどもお互いに社会人になり、結婚もし、住まいも長野県の北と南に離れ、会う機会も減り、年賀状だけのお付き合いが続いていました。
数年前、友人の年賀状に絵本を出版したと書いてあり、私の住む市の図書館に問い合わせたところ、その図書館にはないけれど隣の町の図書館にはあることが分かり、その図書館まで借りに行こうかと思っているうちにまた日が過ぎました。
今年の年賀状にはその絵本が国語の教科書に紹介されたとあったので、とうとう注文して取り寄せました。
絵本のあらすじは、戦火を避けて田舎の親戚の納屋でくらす、はこちゃんとその家族、戦争が終わっても食料が乏しく、お母さんは栄養失調がもとで亡くなり、はこちゃんは残されたおひな様の三人官女の一人にお母さんの面影を重ねて毎年おひな様を飾る。・・・お話の最後はおばあさんになったはこちゃん(はるこおばあさん)がおひな様を人形博物館に寄贈する…と言うものです。
そういえば友人は東京生まれ、子供の頃母親と死別したと話していました。お兄さんが一人いたはずでした。それらは絵本の家族と同じでした。絵本は友人の体験そのままだったのかもしれません。
そしてもう一つ主人公の名前「はるこ」は私の本名でした。「そんなことに心をとめてあれこれ思うなんて自意識過剰だよ」とは思ったものの、やはりちょっと心に感じるものがありました。
私は思い切って友人に電話しました。ほとんど半世紀ぶりに聞く友人の声は優しく若い声でした。