『入管執務調査資料』(菊池嘉晃研究-9) | 安部南牛 | 朝鮮文化資料室

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昭和28年、在日朝鮮人が日共の指導下で武装闘争を激しく繰り返した翌年、1953年に法務省は在日朝鮮人に関わる報告書を幾つも刊行している。

南牛の手元には5冊ある。蒐集した動機は岸信介研究に資したいと考えたからである。何で、李承晩大統領の強い要請にも関わらず岸信介首相は在日朝鮮人を北朝鮮へ送ったのだろうか?という問いへの答えが煮詰まった報告書群である。

これは何かに纏められているのだろうか?菊池嘉晃氏は纏めたものを読んでから論じているのだろうか?

昭和28年2月6日刊行の「入管執務調査資料第二号」、『在日朝鮮人の生活実態(その一)』では、岸信介の地元、山口県下で朝鮮人が福祉事務所へ集団で押し寄せたことが記載されている。恐らく、地元で在日朝鮮人が暴れている、平和条約締結後における在日朝鮮人の集団強い、日本政府機関への集団交渉への対応へ、岸信介代議士そして首相となってからは、独立国としての対応を考えるようになったのであろう。

菊池嘉晃氏は索引で見ると、「岸信介」の名前は19カ所も引用しているが、その「保守的性格の強い岸政権」(495頁)と、保守的性格から論じている。

だが岸信介は保守的性格に乗っ取って「帰国事業」に対応した、と断定して済むのだろうか。