海野福寿『韓国併合の研究』(朝鮮研究-3) | 安部南牛 | 朝鮮文化資料室

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小泉八雲も夏目漱石も登場しない。その上に不勉強の塊の高崎宗司の仕事などを引用している、この本を購入したのは早いが、韓国併合史の「真実」とは程遠いと感じている。

明治政府が韓国の併合を考える端緒は、松下村塾から説くか、薩摩の高麗町から説くかであるが、本筋は小泉八雲の招聘の意図、夏目漱石の留学の目的から分析して行くのが的を射るのだが、海野福寿は気付いていない。

更に、南牛の手元にある『平壌無煙炭資料集成』を引用していない。これでは大韓帝国併合が何を得るために強行されたが描けないであろう。

安宇植は、一族の先達である安重根は早まった、間違って伊藤博文を倒した、と述べていた。安宇植に拠れば、伊藤博文は併合に反対していたのに、安重根の一発が併合を速めた、との指摘であった。

漫画、長編だから劇画なのだろうが、薩摩閥の警視庁伊集院大警視がピストルを安重根に渡す場面が描かれていた。劇画のストリーはNK会にも顔を出していおたコンドルの友人だった。

薩摩閥は併合を急いでいた。薩摩閥が併合を急いだ背景は司馬遼太郎の『坂の上の雲』から推察している。

日本海海戦での大勝利の背景、海軍の技術的背景を司馬遼太郎は踏み込んで解析できていない。技術的知識に疎かったのであろう。だから、ノモンハンでのソ連戦車群を撃破した帝国陸軍戦車部隊を正しく認識できなかった所以だが。

要するに、秋山参謀の電文、「波高し」が意味する技術的背景に司馬遼太郎が言及できなかったことは残念だ。

薩摩閥は海軍を押さえていた。当時の日本海軍の燃料は無煙炭であり、もうもうと煙を出し、航行するバルチック艦隊は格好の餌食であった。

日本海海戦の大勝利は、大韓帝国を併合する道へ進むのである。