「おーい。フンダー!」

声の主はそう呼びかけた。

「…?」

声の主は声を荒げた。

「ったく…。隠れ鬼じゃないんだぜ…。何処に隠れて居やがる。」

その傍らで少年は窓がコツコツと鳴っているのに気が付いた。
声の主は気が付いていない。

窓を叩いているのは、少年のパートナーの妖精、アリーブだった。

声の主を指差し、自分を指差し、何か暴れている。

そしてひどく興奮している。

「…?」

少年は小首を傾げて、わからない、と示した。

妖精はじれったいと言うように、暫く暴れていた。

まあ、偶にはこういう事もあるものだろう。

少年は1人で納得していた。
「な…なんだよ!?」

声の主はさっきより更に顔を赤らめて言った。

「い…いや…な…なんでも…ない…」

少年は必死に笑いを堪えながら言った。

「-っ、取り敢えず来い!みっちり尋問だ。泥棒!」

…すっかり忘れていた。

少年は泥棒という誤解をかけられていたのだ。

しかしあっちから、中で話を聞こうと言ってくれているのだから、うまく誤解が解けたら、泊めてもらえる可能性だってあるわけである。

少年は大人しく従った。

「おじゃましまーす…。」

すると声の主は、急に何かに呼びかけた。
「…え?」


罵声の主がでてきたのは、家の角をもう一つ曲がった所だった。

妖精はうまく網を抜け、素早く隠れた。

そこには、もう一つのドアがあった。

「…あ?」

罵声の主は女だった。

声の主は少年の方に近寄ってきた。

そして覗き込むような姿勢でそう言った。

「あ…あのー…。」

少年は何かを言おうとしたが、その前に、声の主が睨み付けるようにして言った。

「泥棒がこんなちびすけだったっつーのか?」

少年は傷つきながら怯えた。

声の主はぼそっと続けた。

「あたしがこんなちびすけに怯えていたとは…。」

そう言って顔を赤らめていた。少年は思わずプッと吹き出ししてしまった。