いよいよ10時だ。


少年は少年なりに考えはまとめてあった。


寝起きの悪いアリーブが寝たのを確認すると、よからぬ予感はするものの、覚悟を決めて西へと歩き出した。


「ようこそ。」

森から抜け、視界が開けた途端に声がした。

考えるまでもなく、それはキュールの声だ。


「何の用だ?」

声を押し殺して言う。

威嚇しても、キュールは平然と微笑ましい笑みを浮かばせているだけだった。

「話すつもりが無いのなら、此方から勝手に喋らせてもらう。」

少年は言い放つと、一拍おいてから言った。
キュールの去って行く姿を呆然と見つめていると、その方向から紙切れが風に乗って飛んできて、少年の顔を直撃した。

「いっ…」
声をあげそうになって慌てて抑えた。

ショック状態のアリーブの為には、静かにしていた方が良いと判断したのだ。

顔から紙切れを取る。

何なのかと、眺めてみると、それは紛れもなく、少年宛てのメッセージだった。


『この紙を受け取った貴方へ
本日午後10時に貴方が泊まるであろう場所から少し西に歩いた場所の湖でお待ちしております。くれぐれも、妙な真似をなさらないよう。そして貴方には一人で来て頂こうと存じます。貴方の憎む人より』

どうも内容の掴めない手紙だ。
どうして全てを知っている?

何をするつもりだ?

少年は、アリーブを励ましながら自問自答しているうちに、時刻は10時に近付いていた。
アリーブはへなへなとその場に座り込む。

「良い反応ね…。最高。」

そう言ってキュールは去って行こうとした。

しかし、少年はアリーブのパートナーとして、黙ってる訳にはいかない。

「ちょっとまて。」

その言葉にキュールは立ち止まった。

「いや、僕はよく知らないんだけどさ。君、本当にキュールなのか?アリーブの話とは全くあわないんだが。」

少年はキュールの表情を探りながら言った。

キュールが一瞬虚をつかれたような顔をした気がしたのは気のせいだったのだろうか?