久しぶりに「最近読んだ本」の感想です。
図書館に沖縄関係のガイドブックを借りに行った時、
「そういえば同じタイトルのドラマが始まるんだよね」と
目に留まりました。
私の好きな桐野夏生さんの作品ですが、かなり分厚い。
「燕は戻ってこない」
実は予約してあった「真珠とダイアモンド」も先日借りたので、
果たして読み切れるであろうか?と心配でしたが、
2日間で読了しました!面白かった。
ひと言でいうと【代理母出産】の話です。
子供が出来ない40歳代夫婦とお金が欲しい29歳の女性、
そして彼らを取り巻く様々な境遇の男女が登場して波乱のドラマが始まるのです。
北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、
非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。
「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、
ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、
国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。
『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、
予言的ディストピア(集英社HPより)
さすがの【あらすじ】説明↑はお見事!
ですが、もう少し具体的に説明したい私としては
追加情報として加えたいと思います( ´艸`)
☆☆☆☆☆
人口5000人にも満たない北海道北東部の小さな町。
短大を卒業後に実家近くの介護施設で働いて得た200万円の貯金を持って
上京した大石里紀は6年間でお金を使い果たし、職業を転々としながら
「将来への夢や目標」や「生きがい」も持てずにいる。
同僚のテルはリキより4歳も若くて4年制大学を出ているが、
両親が生活費目当てで借りた奨学金の返済に追われ、
付き合っている無職の彼氏からもたびたびお金をせがまれるので、
病院事務のかたわら、夜は風俗の仕事をしている。
「お金に困っているからとはいえ、
自分にとって初めての出産(生まれた子供)を他人に提供し、
お金に換える行為は許されない」と悩むリキだが、
来年で雇止めになってしまう派遣の事情や、
自転車の置き方で揉めて以来付きまとわれているアパートの男など
色々な要因もあって代理母になることを決心する…
☆☆☆☆☆
リキやテル その彼氏や後で知り合うダイキなど、
【貧困層】の人物たちがカタカナで表記されているのに、
代理母を探す草桶基とその妻悠子や基の母・千味子などの富裕層と
「プランテ」の担当・青沼ほかは漢字表記なのが印象的でした。
桐野夏生氏ならではの「女性たちの困窮と憤怒」が見事に表現され、
外食やコンビニ弁当は買えないからおかずの少ない手作り弁当や、
服は古着で、美容院は年に1度、発泡酒さえもが贅沢品…という
まるで年金暮らしのようなつつましさがリアルでした。
特にダイキと初めて会った時の目印が、
「メルカリで買ったディーン&デルーカのトートバッグ」には
苦笑しました。
でも個人的にはこのリキの生き方が「場当たりでいい加減すぎ」で全く共感できず、
草桶夫妻やその母親にもお金持ちの自分勝手な厭らしさが読み取れて、
読後感も悪かったです。
「手取りで14万円もあるなら、都内にこだわらずにもっと家賃の安い
都下や埼玉、千葉、神奈川に引っ越せばいいのに」とか、
「派遣以外の仕事はなかったの?」とか「実家に帰る選択肢は?」とか
まだ29歳なのに救いようがない生き方をしているリキには怒りを覚えました。
ネタばれになるから書かないけど、
最後の半ページで起こる【信じられない結末】も、
私にとっては不幸な未来しか予想できなかったです。
なのに、なぜこの作品を紹介するかといえば、
来週にドラマが始まるからです( ´艸`)
リキ役が石橋静河さん、草桶基役が稲垣吾郎さん、
悠子役が内田有紀さんというのが納得の配役です。
原作が「妻とそっくりな女性だから代理母に決めた」という設定ですからね
「これはもう見るしかない!」ということで
来週火曜日の初回放送に期待しております♪
ところで、悠子の友人「りりこ」の職業が日本画家(春画)ですが、
一風変わった思想を持つエキセントリックな方なので、
あのNHK様がどういった表現をされるのかも興味津々です。笑