一番前に座る優等生
寮生活をしながら医療の道を目指していた、30数年前。一見真面目にやってるようで、全く要領を得ず、激しく単位を落としていた私。留年さえしなければいいと、興味のない科目は、大して勉強しなかった中高校時代。欠点目前の点もとったことはあるが、全体評価としては中の上といったところだった。マイルールが崩せず、中高校時代とは違って明らかな落ちこぼれとなっていったあの頃。いつも一番前の席を陣取り、授業が終わると、先生への質問を欠かさなかった同期の仲間がいた。単位もそう落とす事なく、私のような落ちこぼれとは無縁だった彼女。なのにある夏の短期自習を境に、学校をサボりがちになった。聞けば実習でちょっとしたハラスメントチックな事があったよう。数々の質問を投げかけ、信頼関係を築いてきた先生への不信感を強めたようで、この学びでの未来に夢や希望を見出せなくなっていった。私なら分かる。でも、学業にあんなに熱心だった彼女が、明らかに学校に失望し、迷走していくのを目の当たりにするのは本当にいたたまれなかった。学校にはほとんど行かないが、寮生活は続く彼女。バイトには精を出す。そしてある日、彼女の部屋の扉には、「このままここに占拠するなら、法的手段も辞さない」という内容の文書が貼られたのだった。学校にいかないなら出て行けというのは、正論だけど、学校には、20歳そこそこの若者の葛藤に向きあう姿勢を今ひとつ感じられない。あんなに熱心に勉学に励んでいた彼女だったからこそなおさら、簡単に学び舎を追い出すのかと、激しく怒りを感じたのを覚えている。学校を辞め寮を出て、暫くは、アルバイトをしながら、近くで一人暮らしをしていた彼女。そして、学業が軌道に乗らず、不貞腐れ、大事なテストすらいい加減にしていた私。彼女が遠方に引っ越すまで、人生への戸惑いを共有していた私達。長く年賀状のみの付き合いだったが、最近LINE交流をして、近況を言い合うようになった。人生の中の、つまずきもがく、その時間を共有した仲間。今も交流が続く唯一の仲間。