ミュージシャンという生き方 | bluearrowのブログ

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駆け出しの頃は食えなくて大変です。
以前に掲載、私の食えない時代の日記「下積み時代」が載せてありますので見てください。
 
かれこれ3年前に知り合ったドラマー志望の者がいるんですが、ご多分に漏れず食えない。
去年のミュージシャンとしての年収は200万を下回りまして。
パートさんしてても もう少し稼げると思うんですがね。
でもドラム叩いてお金もらうからにはプロには違いない。
ただ生活出来ないのでアルバイトしてます。
この男は何が何でもドラムだけで生計立てるんだと言って聞かない。
そして私を「師匠」だと言い何かと仕事に付いてくる。
夜間から朝まで掛かる録音など他の楽器のテイク(出番としておきましょう)では居眠りしていてもドラムテイクではガラスで仕切られたミキシングコンソールの側で私の一挙手一投足を見逃すまいと しっかり目を見開いて聴いている。
運搬からセットアップと撤収には専門のスタッフを雇っていますが彼が来る時には少し手伝わせて幾ばくかの支払いをしている訳で。現金を受け取る時の顔ったらない。
人はこんなにも嬉しい顔が作れるんだと こちらの方が感激するほど。
そんな時、彼は「師匠いつもありがとうございます ありがとうございます」と繰り返す。
私は「お前を弟子とした覚えはない」と繰り返す。
「社長」「先生」の呼び方は誰にも許さないですが彼の言う「師匠」だけは特に聞き流している。
音楽センスは良く叩き方や音は非常に良い。
将来的に任せられる仕事は彼に回して行こうかと考えてるし、現状も少しづつ移行しつつある節はあるのでアテにしてはいる。
 
食えない、までは なくても楽な生活してる者ばかりではないミュージシャンという生き方。
なので時々スポンサーを求めて副収入の道を与えてあげる。
今回はレギュラーで勤務する音楽学校とスポンサー契約するドラムメーカー、シンバルメーカーをターゲットにしたところ何と各社が30万づつ出してくれる事で話しが着きまして。
これに今年の正月の飲食会費3万の残額約5万に私が5万を拠出してジャスト100万とした。
ある夜に、お疲れ様会と題して仲間に集合を掛け全員が良い調子になった頃に本題を持ち出す。
「今ここに現金100万がある。
これを今夜集まったお前ら23名で山分けとするか?それとも一人を選んで そいつ一人で持って帰るか?」
ヤンヤヤンヤの大騒ぎの中に「俺のもんだ」「俺一人に渡せ」など圧倒的に下品な意見が多数。
「渡せ 渡せ」の大合唱となった。
それでは、と持参した新品のトランプから5枚を省きジョーカーを入れる。
ジョーカーを引いた者が100万円の当たりとするルール作った。
最大2回りして誰かに必ず当たりが出る。
 
一巡目。
枚数が多く誰もが余裕でサケを煽りヤジで騒がしい。
正直、私に当たりが出たらマズイ。何としても違う物を引かなくては、の思いで取った。
そして23名が一枚づつ取ったがジョーカーは出なかった。
二巡目。
もしや、の思いが誰にも。
いつの間にやら一人づつの手元を見る目が真剣に。
グラスに伸びる手も止まる。
一枚取っては「あー!!」「ダメかー !!」と心から悔しそうな声が上がる。
15人目にドラマーを目指す あの男。
箱から出したカードを手で塞ぎ そっと自分だけで見る。
黙って座り込むと無言のまま高く手を上げてカードを掲げた。
なんと彼がジョーカーを引き当てた。
半泣きのような顔で小さく「やった」と。
そして改めて「やったぞー!!」と店内に轟く声で叫んだ。
全員が駆け寄り握手、頭を撫でる、肩をどつく、女性は頬にキス。
遂に胴上げまで始まる大騒ぎ。
マイクを取り話すが嬉しさのあまり涙声となる始末。
30歳で本業の年収200万の男が100万のボーナス。これは本当に嬉しい出来事に違いない。
が、引き続き私はマイクを取った。
「お前は日頃私の弟子だと公言してるな?
なので この100万は一旦師匠である私が預かる事にする」
男は一瞬、凍りついた。
参加者全員が「そりゃ ないよー」の顔。
男は次の瞬間。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「弟子じゃないです。弟子じゃないですよー」
^^;
人は追い詰められると立場を忘れて金に走るのか?
手元にあったメニューで男の頭をフルスイングで殴って金ピカの封筒を口に押し込んだ。
全員が男に圧し掛かり圧死寸前のタイミングで店員が駆け着けて救助した。