暗闇でゼイブンが口を開く。
ギュンターは顔を上げず、唸った。
「どうしてそれを俺に聞く?」
隣で自分同様、開かぬ扉に背をもたせかけて膝を抱え座るその男は、髪を揺らした。
「そりゃ・・・。じっとしてるタイプじゃないだろう?お前は」
「お前の方こそ、どうなんだ?
知恵を使いそうな、タイプに見えるが」
ゼイブンはお互いを皮肉り合うのは馬鹿げてる。とようやく気づいて、肩をすくめて吐息を、吐いた。
「実際、解ったのはここが捕虜を閉じこめて置く隠し部屋だって事くらいで、つまり俺達は、いわゆる牢破りをしなきゃならない知恵を、必要とされてる囚人と同じだ」
ギュンターは隣で思い切り、俯いて吐息を、吐いた。
「晩餐に来て、囚人になるとはな」
ゼイブンはつい、口が滑って感想を、述べた。
「野獣に牢は似合いだがな」
だがギュンターは怒りもせずに言い返した。
「一見牢に見えない牢獄は、軽い男を閉じこめる罠にしては、最適だしな」
ゼイブンはやれやれと暗闇の向こうのギュンターを見やって、吐息を、吐いた。
「・・・喰い付かれないだけ、マシってコトか・・・・・・」
ギュンターはだが、声を落としてつぶやいた。
「野獣だって喰らう相手くらい、選ぶさ。
お前は不味そうだ」
ゼイブンはつい、問い返した。
「ローランデなら極上か?」
ギュンターは肩を落として深い吐息を吐いた。
「解りきった事を、聞くな」
つづく。

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