5 貴族の、友達
アイリスの叔父、王家の血を継ぐ大公に成ったばかりのアイリスの母の弟エルベスは、良く似た髪と瞳の色をした甥のアイリスの椅子に座り込んでしょげた様子を見つめ、その横に立つとつい言った。
「お前も昔は、それは大人びた餓鬼だったじゃないか」
アイリスはでも、ため息を付いた。
「・・・だって父親が、7つしか年が離れてなくて、私が七歳になる迄私の事を知らなくて、会った時背丈もたいして変わらなくて・・・。
あんなに・・・華奢で頼りなげな方じゃ、こっちが大人びても無理、無いだろう?
私はシャリスとは、全然違うと思うんだけど。
テテュスから見たら私もシャリスのように、見えてると思うかい?」
そう問われてエルベスは首を横に振った。
「少なくとも頼りなげな外観には、見えないな」
そうだろう?とアイリスは自分に良く似た兄のような叔父を見つめた。
「それにいつも、貴方が兄代わりに面倒見てくれたし。祖母や母親や、その姉や・・・ともかく、いつも凄く賑やかだった。でもテテュスは、いつも死の不安に怯える病弱な母親と、ずっと二人きりだったんだ」
「・・・でもあの子はとてもいい子だ。真っ直ぐ人の瞳を見る。何一つ、自分に嘘の無い証拠だ」
アイリスはますます、項垂れた。
「・・・でも甘え方も、知らないんだ」
「・・・そうだな。お前と彼だと、お前の方が大きな甘えん坊に見える」
やっぱり?と、アイリスが叔父を、見上げた。
「セフィリアに話したら、彼女息子を連れてくるって。同い年だし。やっぱり貴族の友達は必要だろうと、言っていた」
アイリスの、眉が寄った。
「大丈夫かな?彼女の秘蔵の、息子だろう?」
叔父は肩をすくめた。
「・・・お前が遊び人だとバレる前迄お前は、彼女の一番の、憧れの人だったのにな。まあ、まだ、潔癖な彼女からしてみたらお前の信用は地には落ちてるが、アリルサーシャの一件で株が少しは上がり、同情もされてる」
「本当に?」
アイリスは顎に手を乗せて尋ねた。
「テテュスはお前と違って、真面目だ。あれでセフィリアだって人を見る目くらいあるから、彼だったら大丈夫だろう?」
アイリスは、顔を上げた。
「でもセフィリアが来たら、療養から戻ったばかりのアリシャも顔を、出さないか?」
「・・・出すだろう?あそこの息子自慢は、凄いからな」
「・・・二人相手か。厳しいな」
たいして年の離れていない叔父は、弟のような甥に同情するようにつぶやいた。
「・・・50人の敵に囲まれた方が、マシか?」
「絶対に、マシだ」
つづく。