「いょう!べっぴんさん!」
ふざけた声が、後ろからし、ファントレイユだけでなくレイファスも、振り向いた。
そこには、滅多に見ない、ファントレイユの父親が、居た。
「おや。べっぴんさんが、二人だったか!」
ファントレイユは途端に微笑むと、父親に抱きついた。
その人好きのする美男は陽気に笑って息子を、抱きしめる。髪の色は二人共がそっくりだった。が、ファントレイユに屈むと、言った。
「顔を、良く見せてくれ。ああ、ますますセフィリアに、似てきたな?」
レイファスが見ていると、確かにファントレイユはその髪と瞳で、人外の者に見える程神秘的だったが、父親はどう見ても、普通の人間に、見えた。
だがファントレイユの形のすっとしてとても綺麗な鼻筋は、彼にそっくりだった。
その通った鼻筋が、彼の父親をとても品良く、見せている。口を、きかなかったらの話だけど。
彼はレイファスをじっと見つめると、
「そりゃ、大人になったらぞっとするな?
軍だけには、入っちゃ駄目だぞ?
男達の気が、それは迷うからな!」
レイファスは、いきなりとても失礼な言動を陽気に叩き出す男を見つめて、どう対処しようか、迷った。
隙を見つけて恥をかかせて仕返ししたかったが、何と言ってもファントレイユの、父親だ。
ファントレイユが無邪気に、聞いた。
「それ、どういう意味?」
「男はべっぴんに、大層弱いって意味さ!」
言ってその男は息子の髪を、くしゃっ!と掻き混ぜた。
ファントレイユは彼が好きらしかったが、父親は「セフィリアは?」と聞き、そのまま、行ってしまった。
レイファスは、久しぶりの彼の背中を、もっと構って欲しそうに眺める、ファントレイユにつぶやいた。
「僕の所もそうだけど。君のお父さんも自分の奥さんに夢中なんだな?」
ファントレイユはレイファスを、そっと振り向いた。
「君も、父親に、あんまり遊んでもらえない?」
レイファスは、頷いた。
ファントレイユも途端、大きなため息を、付いた。
レイファスが、言った。
「・・・だから、いつも母親の意見が僕らの行動を、縛るんだ」
ファントレイユが相づちを打つように、大きく、頷いた。
つづく。