アースルーリンドの騎士追加特記その57 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

だが、ソルジェニーにギデオンは振り向くと、少し首を、小柄な彼に傾けてささやいた。
「・・・まだ終わってないから、する事があってゆっくり出来ない・・・。
明日には戦いの土産話が、笑って出来るようになるといいが」
そう、微笑むギデオンにソルジェニーが口を開きかけ、後ろのファントレイユの気配に彼は慌てて、口を噤んだ。
余計な事を、言うなと彼に釘を刺された事を、思い出したのだ。
思わず振り返ると、アデンの姿は遠ざかって居た。
ソルジェニーが、ギデオンとは反対側に立つファントレイユを見上げたが、彼は俯くと、ギデオンにそっと告げた。
「・・・アデンには、勝手に睨ませて置けばいい・・・」
ファントレイユの切なげな表情と、地面に落とした視線。
その言葉には、ギデオンを気遣う響きがあり、ギデオンは少し笑った。
「・・・ソルジェニーを、厄介者のように扱うから、腹を立てたんだ。別にお前を、庇ったりしてない」
ファントレイユは、目線を少し上げた。
彼のブルー・グレーは夕闇にきらきらと煌めいて、とても綺麗に、ソルジェニーには見えた。
「・・・それでもだ。別に睨んだってお前が容認している限りはどうとも出来やしないんだ。
睨むくらいは、させて置けばいい」
秘やかな、ギデオンへの労りの言葉。
ギデオンの、瞳がそのファントレイユの、少し俯き加減の表情に、腑に落ちないように注がれた。
「・・・確かに、あいつに睨まれて縮こまるような神経の、持ち主じゃないな、お前は」
ファントレイユはギデオンのその言葉にようやく、目線を彼に向け、ギデオンの姿を見つめて嬉しそうに微笑んだ。
「・・・解ってるじゃないか・・・」
ソルジェニーの胸が、彼のその笑顔に微かに震えた。
ファントレイユは自分同様、・・・もしかして自分以上に、ギデオンの事が、好きなのかも知れないと、思ったからだった。
ギデオンが、言った。
「・・・ともかく、用事を片づけてくる。
今夜は出動出来るかどうかは解らないが、ソルジェニーより小さな子供が捕まっているから、早い所あの忌々しい要塞に切り込んで、助け出したいんだ」
ファントレイユは、頷いた。
ギデオンは、いつも地顔を軽やかで優雅な態度で隠し続けるその男が、素顔を晒し続けるいつもとは違う、その真摯な様子を伺うように、続けた。
「・・・お前の仕事はソルジェニーに、もりもり夕食を、食わせる事だ」
ファントレイユは、伺うように見つめてくるギデオンの宝石のような青緑の瞳に気づき、軽やかで優雅な態度を取り戻すと、笑った。
「・・・ああ。そんなのは訳無いさ。君の仕事と同様にね・・・!」
ギデオンは、肩をすくめた。
「・・・まあ、そうだろうな。だが首領クラスが残っている。
アースルーリンドに攻め込む『私欲の民』の首領は大抵、手応えがあると相場が決まっている」
ファントレイユも、肩をすくめた。
「・・・じゃあ君はさぞかしストレスが溜まっていたから、一気にここで、発散出来るな」
そのファントレイユの笑顔に、ギデオンがぼそりとつぶやいた。
「・・・・・・・・・嬉しそうだな」
ファントレイユは尚も朗らかに微笑んだ。
「出来れば、部下を殴りたくなる分迄この機会に全部、発散しておいてくれ・・・!」
ギデオンはファントレイユのそのいつもの言い草に肩をすくめたがつぶやいた。
「・・・そうしよう」

つづく。