アースルーリンドの騎士追加特記その56 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

テントの谷間を抜け、その広場のような場所に出ると、アデンと話しているギデオンの、顔がゆっくりとこちらに向く。
「・・・ギデオン!」
ソルジェニーはとうとう、我慢出来ない様に、駆け出した。
ギデオンはソルジェニーの様子に、嬉しそうに両手を広げて迎えると、王子はその腕の中へと、飛び込んだ。
ギデオンは彼を抱きしめると笑って言った。
「・・・怖かったかい?」
ソルジェニーは彼の胸に顔を埋めて首を横に、振った。
顔を上げてギデオンを見ると、いつもの、とても優しげな彼でソルジェニーは途端に、涙が滲みそうだったが必死で、抑えた。
「・・・ぜんぜん・・・!
刀の触れ合う音も、聞いていない・・・・・・!」
ギデオンは途端に、笑った。
「ならとても、退屈なんだな?」
ソルジェニーは頷いたが、後ろからアデンがすかさずつぶやいた。
「・・・今回の相手は盗賊で、正式な戦ではありません。
軍の様子をご覧になるだけですからな・・・!
大してなさる事もありますまい。
テントでどうか、ごゆっくりくつろぎ下さい」
そして、王子をこんな所へ連れ歩く、護衛のファントレイユを、忌々しげに睨んだ。
ソルジェニーはそれに、気づいた。
ギデオンが途端、冷静な表情でアデンに告げた。
「・・・野営地内を、見回るのも様子を見る事の内。
・・・それも大切な彼の仕事でしょう?」
そう言い、ファントレイユを睨むアデンの視線を、きつい瞳で厳しく、制した。
ソルジェニーはそんな風に、アデンからファントレイユを庇う、ギデオンの態度を見て、心が熱くなった。
思わずファントレイユを見上げたが、彼がそれは切なげな瞳で、そんな風に体制にたった一人で立ち向かうギデオンの恐れの微塵も無い強い態度に、眉を、寄せていた。
そのブルー・グレーの瞳は、『ギデオンはとても大切な人だ』と、物語り、彼の命を救う事は、

自分の職務や今後の昇進よりも余程大事なんだと告げていて、ソルジェニーの胸をきゅんと痛ませた。

           つづく。