大迫選手の進化には、目を見張るものがあります。
韓国・仁川アジア大会男子1万Mでは、惜しくも2位という
結果でしたが、その成長ぶりには、驚かされた走りでした。
他の男女の長距離種目(マラソンを含めて)の中で
一番世界との壁を感じない走りと成長ぶりでした。
最初に申し上げますが、他の選手の2位と大迫選手の2位では
世界へ通じる走りという面で大きな差があります。
男女のマラソンでは、世界との差は、未だ大きく感じます。
タイムではなく走りのスケールと可能性という面です。
小さくまとまって見えた方は少なくなかったと思います。
かつて、日本の男女のマラソンが、アジアでは勝負強かったのに対し、
今は、アフリカ勢が国籍変更をして、数十万ドルの収入を得る為に、
生きる為に生活を懸けて「勝ち」に来ます。
胸一つ差でも、勝ちは勝ちです。
42.195㎞の42㎞は、負けない位置をキープし、
ラストで勝てば良いという作戦は見えていました。
だからこそ、想定できる展開になっているのに、1秒差で負ける。
例え負けても、「この選手凄いなぁ」そう思えれば良いのですが、
「あ~、負けちゃった、惜しいなぁ」と感じるだけでは、
この差は埋まりません。惜しいのではなく、相手が上手かったのです。
マラソン日本代表選手の走りと大迫選手の走りを比べた時、
世界的な長距離指導者は、間違いなく、大迫選手を指導したいと言います。
そして、メダルを獲得するためのトレーニングをするでしょう。
日本人の感覚と世界から見た時の感覚は、違います。
川内選手のこれまでの頑張りは、称賛に値するものですし、
本当に素晴らしい走りを見せてくれています。
しかし、現実問題として、世界で戦う可能性を見てみると、
世界レベルで言うと、SS,S,A、B、Cの中のCです。
大迫選手の位置づけは、SよりのAです。
だからこそ、オレゴン・プロジェクトに参加出来ているのです。
アジア大会の走りも素晴らしかったです。
ラスト1000mからの走りとラスト1周の走りは、
今後の更なるレベルアップと、マラソンへ移行した時の
2時間4~5分台の可能性を感じさせました。
テレビ解説された金さんやアナウンサーは、
何が大迫選手を変えたのか、どのように進化しているのかには、
結局最後まで触れていなかったことから推測すると、
大迫選手の成長の要因について、恐らく分からなかったのだと思います。
マラソン中継にしてもしかりですが、他の競技が技術的な進歩や
武器となるモノを解説している中で、長距離種目だけが
未だに世界ランキングや今季の記録、調子の良し悪し、選手の生い立ちなど、
技術的なことには触れずに、中継を観ている視聴者の皆さんでも
中継を観ながら、PCやスマホからインターネットで調べれば分かることを
話しているので、もう少し踏み込んで、何故一歩一歩がグイグイと
進んでいくのか、大きな走りをしているように見えるのに、
何故、最後までエネルギーが持つのか、スローからペースアップの
切り替えは、どうすれば出来るのかなどを話すと
中継を観ている方の楽しさが増すと思います。
水泳の解説者やゲストが、それぞれの選手の特徴を話す際、
水中動作、水の捉え方、切り方など、何故、こんなに速く進むのか、
どこが以前と比べて進歩したのかを話してくれると、
とても納得出来ますよね。
「あ~、だから、萩野選手は、こんなに速いのかぁ」
「だから、こんなにスタミナがあるのかぁ」
そういう解説を陸上競技でも、もっともっと取り入れて欲しいと思います。
大迫選手の走りは、以前は、着地ばかりが取り上げられていましたが、
今は、着地ではなく、蹴った後の足の引きつけ、巻き込みが
非常に強くなりました。普通、キック力が増すと、地面に対して蹴る力、
つまり出力が強くなるので、エネルギー消費が大きくなり、
脚へのダメージもあるので、非効率的な走りになってしまいます。
しかし、大迫選手は、強く蹴っても巻き返しを速くすることで、
カラダを上へ蹴り上げるのではなく、
前に押し出す力へ変えているのです。つまり、推進力が増す訳です。
ラスト1000mで上げて、ラスト400mで上げて、ラスト200mで上げて、
更にラスト100mでも脚の回転数を上げていましたね。
オレゴンプロジェクトに参加して、世界のトップランナーと一緒に
トレーニングをすることで、「エネルギー効率の良い走り方」を学び
「自由自在にトップギアに入れる技術」を掴んだのだと思います。
成長過程では、故障が心配ですが、そこさえ乗り越えれば
彼は、きっと、今までの日本の選手が超えられなかった壁を
大きく超えてくれると思います。
高橋尚子さんが、世界で初めて、2時間20分の壁を破ったあと、
次から次へと破る選手が出てきたように、誰か一人の挑戦者が
世界との差を詰めてくれれば、後に続く選手も出てくると思います。
世界から置いていかれている状態の日本の長距離界を
再び世界と戦えるレベルへ押し上げてくれると信じて応援したいと思います。
日本の夜明けは近いと信じましょう。
