最後の鎌倉作家である『立原政秋』先生の未発表作が発見されたそうだ。
記事によれば、「自由朝鮮」誌49年2月号とあるから早稲田大学在学中のものか。
しかも、晩年まで明かさなかった本名である金胤奎を使用しているのは、特筆に値する。
立原正秋先生は、現代作家にしては珍しく、中学時代以前の確かな来歴が不明な人だ。
日本統治時代の朝鮮半島生まれで、本人は日朝混血と称していたが、その後の調査で両親ともに朝鮮人であることが判明した。
終戦前に日本に渡り、日本人と結婚、日本国籍を取得しているが、筆名である『立原正秋』をずっと使用していた。(正式に立原姓になったのは最晩年のこと)
朝鮮半島出身者であることを隠し続けたのは時代背景もあるだろうが、日本語を母国語としない作家で直木賞を受賞したのは、おそらく『立原正秋』先生が最初だろう。
発見された短編小説は、『冬のかたみに』に類似しているという。
『冬のかたみに』は、『立原正秋』先生の晩年に近くになって発表された作品であるが、その原型が大学在学中に既に構想されていたとすれば興味深い。
今までは、早稲田大学在学中に懸賞小説で入選した『麦秋』が処女作と思われていた。ただし、『麦秋』の原稿は行方不明になっている。
是非、発見された短編小説は出版していただきたいものだ。
まったく、『立原正秋』先生は興味が尽きない。