我が家は谷戸の底にあるので、風が吹き始めると周囲の森が、一斉にざわめきます。
今は亡き、鎌倉作家達も、『風の音』を小説や随筆に書いています。
有名なのは、川端康成の「山の音」ですか。
「鎌倉のいわゆる谷の奥で、波が聞こえる夜もあるから、信吾は海の音かと疑ったが、やはり山の音だった」
主人公に死期が迫ったことを予感させる場面です。
立原正秋先生は、「風の裂け目」と表現しています。
風の裂け目に、何を見たのか。何を感じたのか…… 川端康成と共通していますね。

酒が切れると、いやに風の音が響きます。
『風の裂け目』が見えるのも、もうじきなんだろうなと思う今日この頃です。
最後の鎌倉作家、立原正秋先生も『謎』の多い作家であることは、前にもちょっと書きました。
いくつもの評伝も出版されていますが、いずれも立原正秋先生と実際に交友のある人達が書いたものですから、純粋な評伝とは言えないでしょう。なぜなら、意識的か無意識的かはわかりませんが、言葉を濁しているように見える部分がたくさんあるからです。
その中でも、以下の本が、一番、評伝の体裁を整えているよう思います。
立原ファンにご一読をお薦めします。

武田 勝彦
身閑ならんと欲すれど風熄まず―立原正秋伝