2023年6月14日、オランダのウィレム=アレクサンダー国王とマキシマ王妃は、アムステルダムの王宮で外交団を招いてガラディナーを開催しました。 





マキシマ王妃は王室のコレクションの中から、過去に一度だけ着用したことがあるサファイアのティアラを選びました。








マキシマ王妃が過去にこのティアラを着用したのは、2010年にデンマーク女王マルグレーテ2世の70歳の誕生日祝賀式典に出席したときだけでした。今回は13年ぶり2度めの着用です。



オランダ王室のサファイアティアラといえばこちらの戴冠式でも着用された立派なティアラが有名ですが、今回は比較的小さな珍しいティアラを着用されました。





このティアラは、ティアラとしては 2009年に登場したばかりですが、元々あった王家のサファイアネックレスを使ってティアラにセッティングされたもので、元々の歴史は19世紀末まで遡ります。ティアラの名前はその構造からDutch Sapphire Necklace Tiaraと呼ばれています。ダイヤモンドの周囲にサファイアが配置され、その上にサファイアの周囲にダイヤモンドが配置された尖った菱形のパーツが配置された小さめのティアラです。 



このティアラは19 世紀末、ウィレム3世国王が妻エンマ王妃のために購入したダイヤモンドと11個のサファイアのチョーカーとして始まりました。そのチョーカーは他のサファイアやダイヤモンドのジュエリーと一緒にウェディングパリュールに集められました。 時にはサファイアのペンダントがチョーカーの中央に追加でセッティングされることもありました。




エンマ王妃


その後、娘のウィルヘルミナ女王、そして孫娘のユリアナ女王がそのネックレスを着用し、長さが変えられたり、ペンダントが付け替えられる等セッティングを変えて着用されてきました。

左上:ユリアナ女王がペンダントなし
右上:ベアトリクス女王がペンダントを付け替えて着用
左下:ユリアナ女王
右下:イレーネ王女(ベアトリクス女王の妹)



このエンマ王妃のネックレスがティアラの大部分を占め、ティアラの上部に配置された5つの菱形のパーツはまた別のネックレスの要素を追加したもので、Dutch Sapphire Necklace Tiaraは2つのネックレスから構成されています。



もう1つのネックレスは1901年にウィルヘルミナ女王にウェディングギフトとして贈られたサファイアとダイヤモンドパリュールに含まれるものでした。





結婚祝いのパリュールを身に着けるウィルヘルミナ女王

ウィルヘルミナ女王は 1901 年にメクレンブルク シュヴェリーンのヘンリー王子と結婚しました。アムステルダムの宝石ブローカー、エマヌエル・ヴィタ・イスラエル(Emmanuel Vita Israel )とアムステルダムの宝石商Hoetingは1900 年に800個以上の石を使用して、すべてホワイトゴールドにセットされたパリュールを作成しました。 これらの石の 1 つは、ホープ ダイヤモンドやコイヌール ダイヤモンドと同じ鉱山であるゴルコンダ鉱山で産出された非常に大きなインド産ダイヤモンドでした。 パリュールには、ティアラ、ネックレス、ブレスレット2個が含まれていました。


ウィルヘルミナ女王は生涯を通じてこのパリュールを着用していましたが、最終的にはこのパリュールを着用した唯一の女王になってしまいました。  
1962年にウィルヘルミナ女王が亡くなると娘のユリアナ女王がパリュールを解体し、ユリアナ女王の4人の娘のために他の小さなジュエリーを作るために使用されたと言われています。パリュールで唯一残っているのはブレスレットで、時間をかけていくつかのダイヤモンドが取り除かれています。 
解体されたティアラは、ユリアナ女王の4人の娘、ベアトリクス王女(女王)、イレーネ王女、マルフリート王女、クリスティーナ王女への贈り物のジュエリーに変わりました。 贈り物にはイヤリング3ペアとブローチが含まれており、 それらのイヤリングのうち、1つはサファイアとダイヤモンドの8の字イヤリング、もう 1 つはサファイアのペンダント イヤリングであることが解っています。 ブローチにはダイヤモンドまたはサファイアのペンダントが付いています。
そしてネックレスの一部はDutch Sapphire Necklace Tiaraに使用されました。

菱形のパーツ6つのうち5つはティアラへ使われました。残りの1つは指輪やブローチ等に使われたのかもしれません。





2つのサファイアネックレスから作られた新しいティアラは2009年にマルフリート王女(ユリアナ女王の三女)が初めて着用しました。 



2009年5月25日、マルフリート王女はハーグのノールデインデ宮殿で開催された、オランダを国賓訪問中のチリのミシェル・バチェレ大統領を讃える公式晩餐会でDutch Sapphire Necklace Tiaraをデビューさせました。







2010年4月16日、マキシマ皇太子妃(当時)がデンマークのマルグレーテ女王70歳の誕生日祝賀会の一環として開催されたフレデンスボー宮殿での夕食会でDutch Sapphire Necklace Tiaraを着用されました。





2014年6月3日、オランダのマキシマ王妃はアペルドールンにあるロー王宮で開催されたモナコ公アルベール2世を歓迎するディナーでベアトリクス前女王が初めてこのティアラを着用しました。



ベアトリクス前女王は前年の2013年に退位し、長男のウィレム=アレクサンダー国王に王位を譲りました。女王のティアラとしては小さかった?ということでしょうか。





2018年10月23日、オランダの国賓としてイギリスを訪問した際、メイベル妃がバッキンガム宮殿で開催された晩餐会のでサファイア ネックレス ティアラを着用しました。

2018年10月23日、イギリス・ロンドンのバッキンガム宮殿で行われた晩餐会で、カンタベリー大司教ジャスティン・ウェルビーとともに歩くオランダのメイベル妃。


ネックレスがティアラとしてセッティングされて以来、ネックレスの形では使用されていません。そのため、ネックレスからティアラへの変更が永続的な変更なのか、今でもネックレスとしても使用可能であるかは不明です。



ベアトリクス前女王は退位するまでこのティアラを身につけませんでした。そして2010年に初めてDutch Sapphire Necklace Tiaraを着用したマキシマ王妃も、2013年に王妃に即位してからもこのティアラを身につけることがなく、13年が過ぎました。




オランダ王室には華やかなティアラが多くあります。

この比較的小さなティアラDutch Sapphire Necklace Tiaraは今後カタリナ=アマリア王女、アレクシア王女、アリアーネ王女等、若いプリンセス達が身につける機会が増えるかもしれません。




カタリナ=アマリア王女はノルウェーのイングリッド=アレクサンドラ王女の18歳誕生日を祝うガラディナーでティアラデビューし、ヨルダンのフセイン皇太子の結婚披露宴が2度めのティアラ着用でした。

3つ目のティアラは今回のDutch Sapphire Necklace Tiaraかもしれません。


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